Lian Hearn, Across the Nightingale Floor

Across the Nightingale Floor Episode 1 (Tales of the Otori)

Across the Nightingale Floor Episode 1 (Tales of the Otori)

魔物の闇 (オオトリ国記伝 1)

魔物の闇 (オオトリ国記伝 1)


英語版の方はわたしが読んだバージョンがはまぞうになかった。
翻訳のタイトルもひどいもんだが、本当のタイトルを訳すと
「ウグイス張りの床を越えて」みたいなもんで、 
かっこわるいわ、日本語だと。
いやー、サクサク読み終わってしまったよー。
前に読んでいた「氷と炎の歌」なんて700ページ近くもあったのに、
10日ぐらいしか進んでいないような感じの濃すぎる展開だったんだが、
これは2章進んだら「そして一年が過ぎた」のようなスピーディーな展開。
だと思っているんだがひょっとしたら現実逃避がより激しくなってるのかも・・・。


本の紹介はこんな感じ。

In his black-walled fortress at Inuyama, the murderous warlord Iida Sadamu surveys his famous Nightingale Floor. Constructed with exquisite skill, it sings at the tread of each human foot. No assassin can cross it unheard.
Raised in a remote mountain village, Takeo is one of the Hidden, a reclusive and peaceful people who know nothing of war. But the community's tranquil existence is shattered by a brutal and bloody massacre, which Takeo alone survives ― rescued by the mysterious Lord Otori Shigeru.
Takeo's subsequent quest for revenge takes him to places he has never envisioned. His voyage is one of treachery, of honour and loyalty, of beauty and magic. It is also a journey of self-discovery, as he learns of talents he did no know he had: preternatural hearing, invisibility and the ability to be in two places at once. Ultimately, though, it is a journey that will lead Takeo to his hidden destiny within the walls of Inuyama.


イヌヤマの黒い塀に囲まれた城塞で、残忍な無精イイダサダムはかの有名な「ウグイス張りの床」を見つめていた。精巧な技術で作られたそれは、人が歩くたびその一歩一歩に鳴く。暗殺者はその音を聞かれることなく近づくことはできないのだ。
人里離れた山里で育ったタケオは「隠れ」、世間から隠れ、穏和で、戦の話など何も知らない人々、の一人であった。しかし、その村社会の平穏さは、粗暴で血まみれの大虐殺によって打ち砕かれた。その中でタケオ一人が生き残ったーミステリアスな殿、オオトリシゲルによってその命を助けられたのだった。
その後続くタケオの復讐の旅は、彼が夢にも見たことのない場所へと誘う。彼の旅は裏切りの、名誉と忠誠の、美の、魔法の旅であった。自らが知らなかった才能ー超自然の聴覚、姿を消すこと、同時に二箇所に存在できることーを学ぶことによって、それはまた自分発見の旅となった。しかし、ついに、旅はタケオをイヌヤマの城壁内にある彼の隠された運命へと導くのであった。


ちなみに翻訳版の紹介はこちら。

戦国の世。日本によく似た国のミノという村で、ひとりの少年が生を受けた。少年の名はトマス。ミノは隠者ー禁じられた神をあがめる人々ーの暮らす村だ。戦国の世のなかでも、ミノの人々は穏やかで平和な暮らしをいとなんでいた。だが、その一帯をおさめている武将、イイダ・サダムが、隠者たちを迫害しはじめる。村が襲われ、村人たちは皆殺しにされたーたまたま山に行っていたトマスだけをのぞいて。村にもどったトマスも、残っていたイイダの家来たちに見つかり、襲われそうになる。そこへ救いの手をさしのべてくれたのが、オオトリ国の武将、オオトリ・シゲルだった。命を助けられて、生涯の忠誠を誓うトマスだったが、これが、自身に背負わされた暗い宿命の扉を開くことになるとは、知るよしもなかった。少年の宿命とは、すなわち、復讐と殺戮。虫ひとつ殺せない心やさしい少年は、血にまみれた刺客となったー。欧米各国で発売直後ベストセラー入りをはたしたサムライ・ファンタジー

オオトリ国はおかしい気がする。オオトリは名字だ。甲斐の国を「武田国」にするようなもんだ。オオトリ氏の中心地はハギという港湾都市だ。


ちなみに作者は英国人、文学を学んでその後オーストラリアに移住、日本にも半年ほど留学経験がある。
オフィシャルサイトもある。見るとこっちの大学の教員にいそうなおばさんだ。


以下バレ
まあこれはアマゾンの評にもあったが名前がかなり現代過ぎるのがちょっと気持ち悪いかな。あと「サギがまるで地蔵のように微動だにせず獲物を狙っている」はやり過ぎ。サギはオオトリの家門に使われているので、良く出てくるのだが、地蔵はな。あと日本語の表現の英語直訳、というのがいくつかあって面白かった。八つ裂きにする、はちゃんとinto eight piecesだし。
主人公のいた村はどう考えても「隠れキリシタン」の里だ。人どころか動物等も殺しちゃいけない、という教えで育った主人公の、元の名前はトマス。ほら、もう隠れキリシタンだろう。
なんかね、ラノベっぽいのよね。そこがまたいいんだが。心優しく育った少年は、自分を殺そうとし、村人をすべて殺した武将への復讐を誓い、彼を助けてくれたシゲルのところで彼の用紙となるべく読み書き、剣術、馬術を習うんだが、それにプラスして不思議な能力に目覚める、と。Tribeの人々はそういう能力を持っていて、しかもかつて人々はみんな持っていたが、今ではTribeのナナ家族の人々しかもっておらず、金を払えばスパイから暗殺までなんでもこなす。というわけで漫画やアニメ的忍者であるな。しかもタケオは、本人も強力な能力者である父の力を受けつぎ、これからどう化けるのか分からないぐらいの才能があるらしい。父はTribeの運命から逃れるため、彼の育った村に来て、子供をもうけ、そしてTribeに殺されてしまったらしい。この辺もあとで関係出てくるのかな? そして同盟の名を借りた、シゲル暗殺計画に組み込まれた結婚、その婚約者がまた男はみんな欲情してしまうような美少女。そして運命的なふたりの邂逅、という、ラブあり、陰謀あり、超能力あり、裏切りあり、という怒濤の展開なのであった。


結局シゲルは死んでしまうのだが、その前後のTribeの動きが一貫してないような気がして「これじゃシゲルは死ななくても良かったじゃん!」とは思ったが、死なないとお話が進まないのね、ということでまあいいか。最後は悲しい若いふたりの別れであった。あまりのオモシロサに急いで続巻を買ってしまいましたよ。三部作、ということなので。