Lian Hearn, Grass for his Pillow

Grass for His Pillow: Episode 3: Lord Fujiwara's Treasures (Tales of the Otori)

Grass for His Pillow: Episode 3: Lord Fujiwara's Treasures (Tales of the Otori)


翻訳では「オオトリ国紀伝」の第二部。
タイトルはそのまま訳すと意味不明だが(「彼の枕の草を」みたいな感じ?)
要は「草枕」ということが言いたいのかな、と思う。
自分の居場所がなくなってしまって浮き草状態になっているタケオと、
その彼を求めて愛しているお姫様が、みたいなことか。
オオトリ、という名字の漢字が想像通り「鳳」であることが判明。
前回ではなんとか復讐を果たしたものの、
そのせいで自由に身動きできない窮地に立たされた主人公タケオと、
その彼と道ならぬ恋に落ちた若く美しい「男を惑わす」美貌を持つカエデ姫、
その二人がこの先どういう道を行くかを決める、第2巻。


1巻と違ってどこに向かって物語が進んでいるのかが分かりづらく、
しかも全巻ではメキメキ武士っぽくなり、「忍者」としての特殊能力を開花させた華やかさはなく、
前半はひたすらタケオが耐えるお話。イジメあり、滅私奉公あり、
読んでてつまらないというか暗い感じ。といってもその暗さがこの先何かを!
という予兆もあんまり感じさせないんだよなぁ、なんかちょっと薄いんだよね、
人物描写が。これは1巻でも感じていたんだが。
それに引き替えカエデはまあまあマシであった。
遠い親戚でもあり、自分に領地を譲りたいと言った、
この時代の女性では珍しく「女領主」としてそれなりの地盤を築いていた人物を倣いに、
自らも女性であるが男としての仕事と義務と任務のために稚拙ながら手練手管を使おう、
と割と積極的に動く、カエデ。でもちょっとご都合主義っぽい感じもするし、
そういう決意をした割には簡単に心弱くなってしまってウダウダ言ってるところは共感できず。


大河物語であるのは分かるが、「氷と炎の歌」を読んだ後では薄っぺらさばかりが目立つ。
主人公は実は意外に若いし(17.8歳)、愛あり、冒険あり、闘いあり、裏切りあり、
という感じで歴史物っぽいラノベ風、といったところ。
タケオがなぁ、若いから愛に向かってがむしゃらになるのは分かるんだが、
千人だかの人員に慕われ、これから自分の正当なる遺産を取り戻すべく立ち上がったんだから、
もうちょっと他の権力者たちとの関係を構築してから結婚へ進むべきなんだよなぁ。
彼の教育係を任じている大寺院の構想ですら最終的に(しかも2ページぐらいで)認めちゃうし。
明らかに後半ではこの結婚問題が彼ら二人の足を今後引っ張りそうになるフラグが立ってるのよねぇ。
大河ドラマの見過ぎなんだろうか。若くカリスマを持った将来性のある武将は、
時には冷徹に見える鋭利な頭脳、というのを持っていて欲しい、とするのはわたしの趣味なのか?


豆腐、しょう油、小豆、の様な単語をそのままにせず、違う語で言い換えている、
という作者の心意気は気に入ったが。