Ireland and her neighbours in the seventh century

Ireland and Her Neighbours in the Seventh Century: Michael Richter

Ireland and Her Neighbours in the Seventh Century: Michael Richter

アイルランド研究をする外国人(ドイツ人)の研究者は、アイルランドだけでなく大陸との関係も考慮することが多い、をあらわす典型。
7世紀におけるアイルランドの状況を説明したあとで、アイルランド人のperegrini概念とその影響を、アイオナノーサンブリアと大陸で探り、アイルランドにやってきた他国の人たちに対するアイルランドによる/への影響と進み、そしてアイルランドであるいは他地域のアイルランド修道院等で作られたラテン語史料を概観する、というのが全体の構図。
盛んに強調されるのが、アイルランドと特にボッビオの関係。その関係はボッビオが創設されてから8世紀に至るまでまったく途切れることなく継続されていたこと。つまり、アイルランドと大陸との間に横たわる海はその交流を断絶するものではなかった、ということ。言い換えれば、アイルランドは西洋キリスト教世界の一因であることは明白である、という宣言にも近い。
西洋で初めて、ラテン語がまったく使われていなかった地域にキリスト教ラテン語を代表とするラテン文化が導入されたのがアイルランドであり、その聖職者や修道士の、涙ぐましいまでのラテン語への愛、ローマ教皇への敬意、そして大陸の新しい思想への熱意が、「黄金時代」と言われるものの背景にあったことがよく分かる。だからこそ7世紀において、特にブリテンから多くの聖職者等がアイルランドに学問のために渡ってきたのだ。
アイルランドは西洋の大きな地域に多大な影響を与え、そしてまたそこからも大きな影響を受け、そうして中世初期のキリスト教の発展が起こった、といっても言いすぎではなかろう、と思わせる本だった。


タイトルから予想した内容とはかなり違ったけれど。