中世ヨーロッパの農村の生活

中世ヨーロッパの農村の生活 (講談社学術文庫)

中世ヨーロッパの農村の生活 (講談社学術文庫)

この本の主要な特徴は以下二つ。

  1. 最終章以外13世紀が中心となりそれ以前の世紀についても記述がなされている、つまり初期中世が主要な時代。
  2. 舞台がイングランドであること。

初期中世のイングランドの農村での生活が、その成立、領主、村人たちの生活、結婚・家族、労働、教区、司法についてそれぞれ章を割いて紹介されている。さらにポイントは一般書であるために非常に読みやすく翻訳されていること(原文の読みやすさは見ていないために不明)。読みやすさの一巻でもあるが自分にとって残念なのは中の貧弱さと参考文献表の無さ。さらに参考にされた研究者名がカタカナ表記しかなく、数名の研究者については推測を付けたスペリングで検索して本を見繕ってみた。
13世紀までは初期中世として(史料の文量の違いは大きいが)、研究の参考になることがよく分かった。変化はあまりにも緩やかで、15世紀を迎えるまではほとんど史料上からは分からないようだ。決定打はやはり黒死病で、しかもその後しばらくの間は混乱状態で「後期中世」の特色の萌芽がよく見れば見られる程度でしかない。


本格的に農村史やらないといけないのか…。


以下は自分用のノート。
保有農や小屋住農の立場は自由民、半自由民、奴隷、と様々だった。」p. 44
「執事(または家令)」p. 70  訳語の問題、おそらくsteward。でも「家令」でも教会のstewardには使えない…。
「エルトンにすむ人々の生活を左右していたのは、法的地位(自由民か不自由民化)、土地や家畜をどれだけ保有しているか、そして(前の二点と関連しているが、別のものである)社会的地位、の三つである。」p. 95
「「農奴」は理論上「不自由」な地位にあったが、実際には「自由民」的特権を獲得している者が多かった。彼らは財産を買い、売り、遺言で譲り、相続した。」p. 96
「そもそも「自由」「不自由」の概念自体、単純なものではなく、その中にさまざまなニュアンスを含んでいた。」p. 97
年老いて労働を「引退」したものの扶養(普通は子ども)に関して、子どもがいない場合は契約を結んで扶養してもらう例 pp 182–3