一般書及び今後のこと

中世初期アイルランドの、一般書的、教科書的論文ほぼ読了(9世紀以降の、とりあえず今のところは射程外の部分は未読。ー実際はかなり以前に読んでいたが、記憶に無し。ただし、自分がとったメモを見ると、発想は違うが、気になった部分が今とほぼ同じで、驚く)。

Early Medieval Ireland, 400-1200 (Longman History of Ireland)

Early Medieval Ireland, 400-1200 (Longman History of Ireland)

一般書なので、重要なところを焦点に当てて、微細な部分をすっ飛ばしているので、読みやすいといえば読みやすいが、Ó Cróinín*1の英文は所々読みにくいな。
司牧活動の対象についてはEtchinghamと同じ考え、つまり、教会領のmanaigまでが現実的と見なしている。そういえば、Ó Corráinとはいろいろと考えが違う人だったような気が。問題は、文書史料がどばっと現れる直前の政治的・社会的転換の原因を、疫病や飢饉であり得る可能性を述べているが、その論拠を示していないこと。一般書だからなのか、「一般論」だからなのか。それ以前を「記録」した年代記では、どこまでその飢饉や疫病が拾えるか問題があるし、拾ってどれぐらい使えるかも微妙。指導教官は積極的に使っているのだが。
ペストもそうだが、人口がどっと減るほどのものであれば、その人心への影響も相当のものであろうし、できればそのあたりを突っ込みたいのだが、いかんせん時代と場所が難しすぎる。この手の方法は、本来は記述史料がもっと多く、できれば市井の人たち(それでもある程度以上の社会的立場はなければ、そもそも史料が残せないのだが)の記録が残った時代、すなわち盛期中世以後のものであって、しかも記述史料の登場はアングロ・ノルマンの登場する11世紀まで待たなければならないアイルランド史でやるのは、すでに暴挙ではあるのは重々分かっている。よよよよ・・・。
昨日さっくり調べた時点では、この時代のブリテン諸島での病気、疫病に関する論文がほとんど無い。この時代に限れば、ビザンティンが多い。つまり、記録が残っているということで、ブリテン諸島においては記録が残っていない、ということが明らかなのだが。あとは、飢饉に関してと、それと密接に関わりある気候についての論文等を探す予定だが、ともかくこれは7月に入ってからにしたい。
現状は、社会構造の変化とその中で不変であった部分、更にその流れにおけるキリスト教会の動き等について集中した方がよさそう。
あとは以前からやっている一次史料を使った地味な作業がまだまだ続く・・・。

*1:narrenstein氏に教えてもらったサイトでHTML数値文字を入れてみました。自分のでは元々読めていたのでうまくいったかよく分かりませんが、ともかく見た目にはファダ付きの文字が出ました。ありがとうございました。