百万年の船(1)

百万年の船〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

百万年の船〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

表紙が出ないということはひょっとして通常では入手できない本になってしまったか。ハヤカワでは「絶版」とは言わないらしいが、状況としては絶版と言うことか。このような本をデジタルで読める要にして欲しいです、ハヤカワ出版さま。
神の祝福か悪魔の呪いか、ある一定の年齢に達すると都市も取らずめったに死ぬこともない、世界中にいる非常に少数の人たちの物語。初めは紀元前1世紀から始まる。
長い間一人で生きねばならず、たとえ結婚したとしても周囲から疑いの目をもたれぬうちに家族から離れ、一箇所に留まり続けることができないからこそ仲間を捜そうとする、中心となる主人公の気持ちは分かるが、それとは異なる生き方をする者たちもいる。せっかく仲間が見つかったのに袂を分かち自ら自死を選んだり、一緒に生きる約束をしながら相手を裏切ってその財産を奪って一人生きることを選んだりする。最後の女性は、後から考えるとその逃亡劇からも分かるように、一人で生きて言う稿とする意識が強かったことは分かったし、女性が一人で生きるためには体を売るしかなかったことから、裏切りは仕方がなかったとしても衝撃的な幕切れだった。
現代に生きててよかった。

2巻は13世紀から始まる。巻末にいつ頃の話か書いてあるのがとっても親切。