フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

積ん読、ノンフィクションの片づけ開始。
一般書として書かれているので、数学の難しい理論や公式は「補遺」として本の最終部に付されているので、そこを無視して読めば350年に渡る数々の数学者の努力と発見が連綿と連ねられているのを流れを止められることなく読み進められる。人間のたゆまない思考の前進と、それによる数学の理論(数論)の発展が、それだけで引き込まれる科学史(数学だが)として成り立っている。作者は数論をよく理解している上に、作家としても素晴らしい才能を持っているようだ。
フェルマーの最終定理の証明のために、日本人の二人の数学者が多大な影響を与えていたことは知らなかった。そのうちの一人は非業の死を遂げるが、自ら死を選ばなければひょっとしたら自らが手がけ始めた予想によって、4世紀にわたってフェルマーに踊らされた数学者たちの悲願が達成されたのを見れたのかも知れないと思うと、残念。
しかし、フェルマーの「ここには書く余裕がないから証明できたけど書かないよ」というのは、本当のことなのか、フェルマーの得意の意地悪なのか、よく分からない。とりあえず意地悪でひどい人間であることは分かった。それでも頭はものすごく良いんだからなぁ。