禁欲のヨーロッパ

古代後期から末期における、中世の修道院の前史。なぜ修道院が西欧に受け入れられたか、を、宗教的心性や信仰心ではなく、「禁欲」をテーマに、社会的文化的背景を述べることで、解説していく。禁欲の意味で禁じられる欲求は何よりも性的欲求であり、いかに性的な感情を抑えるかが、古典ギリシャの食生法から始まった文化的背景を持つものであると述べる。
神に近づきたいとか、死んだら天国に行きたいとか、そういうキリスト教的な側面とは違う方向から禁欲を述べて、その実践の場が修道院である。もともとギリシャ世界の文化的背景の下で、その実践において祈り、手による労働、砂漠あるいは荒野での孤独か仲間との共住の生活がなされ、それが西洋に受け入れられることによって少しずつ変質していき、そしてもはや禁欲が禁欲とも言えなくなる状態になったところで本書は終了。それに渇を入れるのが禁欲的修道院文化をもったアイルランド、特に聖コルンバヌスが、というのが次巻の触りになるのかな? 続きがあるよ〜、という気を持たせているがいつになるのやら果たして出るのかどうかは佐藤先生次第か。