風の十二方位
- 作者: アーシュラ・K・ル・グィン,小尾芙佐,佐藤高子,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1980/07
- メディア: 文庫
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ル・グインを読んで感じるのは、ファンタジーとSFのカテゴリーの曖昧さ、あるいはそのカテゴリーの重なり具合の深さ。SFのガジェットがあるか、ファンタジーの道具立てがあるか、の違いだけで後は「ここではないどこかの世界」の話なのだから、当然といえば当然といえる。
個人的には本人がもっとも「ハードコアなSF」と称している「九つのいのち」と、「純然たるSF」としている「帝国よりも大きくゆるやかに」(これはタイトル自身にもしびれた)、終わりのない、心をえぐられるようなユートピア世界が舞台の「オメラスから歩み去る人々」が良かった。
世界観に入るのが苦手なゆえに、やっと世界観に入った、と思ったら唐突に終わってしまう短編集が苦手なことと、昔のハヤカワの1頁当たりの文字数と行間が、目の状況が悪化した状態で非常に読みにくかったことで、非常に時間がかかった。