蒲公英草子

蒲公英草紙 常野物語 (集英社文庫)

蒲公英草紙 常野物語 (集英社文庫)

このシリーズの一冊目を読んだのは相当昔すぎて、不思議な能力がどんなものだかさっぱり忘れていた。
不思議な能力を持った人たちが主役ではなく、子どもでもなく、大人でもない時代の女の子がある一つの事件、あるいは悲劇的運命を経て、大人へ一歩近づく姿が描かれている一人称による小説、といった方があっている。旧きよき時代(19世紀末、日露戦争前夜)の小さな社会とそこに住まう人たちの姿が、少女の目を通して物語られるのは、良質の少女漫画を読んでいるようなくすぐったさを感じる。
ただ、最後がなぁ。恩田陸の小説は少ししか読んだことがないが、終わり方があんまり好きではなかった印象。運命における聡子様の心情の「現し」方とか、明るい未来をほとんど感じさせなくて、会いたい会いたい、とだけ言っている終わり方は、中盤までの美しさを台無しにさせている感じがするが、それが狙いなのかなぁ。現在の状況を反映しているのだとしたら、先行きは暗いだけだな。