都市と都市

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

ハードボイルド。SF関係の賞をたくさん獲っているが、厳密な意味ではSFではない。
2つの都市が物理的には混在している東ヨーロッパっぽい場所。しかし言語も習慣も文化も経済状況も政体も違う2つの国の住人は、お互いの都市とそこに住む人々を「見ない」「聞かない」ようにして生活する。その生活態度は実際によく見えてない、と思われるほどに徹底しており、またそれを破った場合、「ブリーチ」したことになり、「ブリーチ」という2つの国に属さない絶対的な機構によって拘束され、どこかに行ってしまう。また、2つの都市と都市の間にどちらにも属さないもうひとつの「都市」があるという伝説が存在している、そんな場所が舞台。
そこで起こった殺人事件を、片方の国の警部補が担当し、あちらの国の刑事とも協力し、解決していこうとする物語。警部補は特にすごい能力があるわけでもないが、話が進むにつれてなんだか格好良くなっていく。その格好良さのせいか、最後はさもありなんな終わり方。
後半3分の1ぐらいから面白くなるんだが、ともかく世界がよく分かりづらいのと、そのせいで物語世界に入りづらかった特に前半が辛かった。あっち側に「入国」してからはかなり面白かったんだが。それでも私にはミステリー仕立ての小説はいまいちか。