なのはな、ドロねこ9・3巻

なのはな (フラワーコミックススペシャル)

なのはな (フラワーコミックススペシャル)

ハードカバー。表紙が素適。萩尾望都福島原発事故に霊感を得るとこうなる、という作品集。2タイプの作品があり、一つ目は祖母を津波でなくした少女と、チェルノブイリ事故を体験した少女との時と場所を越えた夢の中での交流の話。なのはな、は、事故が起こった直後の「植物を植えて放射線を減らそう」という運動に啓発された話。植物を植えることにはほとんどなんの意味もないことを知った今読むと、ものすごく残念な気がする。汚染された地域に咲き乱れる菜の花やひまわりが夢物語で終わってしまったことが。
もうひとつは放射性物質プルトニウムとウラン)擬人化。美人/美男子でみんなに愛された彼らが、突然人びとに恐慌を巻き起こす。残念なのは、それぞれが「私たちは夢のエネルギー」と直接的に発言したこと。昔の萩尾望都であればもう少し婉曲的に表現してくれたんじゃなかろうかと。そのセリフのせいでファンタジー調だったものが、薄汚れた現在に引き戻されてしまう。
サロメ20XX」が個人的に最も気に入った。十万年も閉じこめられることになるプルトニウムに感情移入できる漫画はおそらくこれ以外に無かろう。下敷きが「サロメ」であることも、悲哀を醸し出すのかもしれない。愛するヨカナーンに永劫の牢獄に投獄されて嘆き悲しむサロメプルトニウム。最終頁は世界の終わりを示唆しているんだろうか。

ドロねこ9 (3) (バーズコミックス)

ドロねこ9 (3) (バーズコミックス)

奥瀬サキ(早紀名義も含む)作画で、連載始まって最終巻が出るのを初めて見た。まさか3巻で終わるとは思わなかったが。結局8人の弟全員出てきたわけではないし、突然お母さん出てきて戦闘しまくって、まあや死す、みたいな鬱終了かと思ったらどうやってか戻ってきて、なんか微妙なハッピーエンドで終わってしまった。
お母さん(寧子)は、『コックリさん』の野良猫の寧子さんを同じなのか(少なくとも見た目はそっくり)、蠱り者の設定が微妙に違うから、別世界の寧子さんかもしれない。