ハプスブルグ家の終焉

先月16日に、オットー・フォン・ハプスブルグ大公の葬儀がウィーンであったことを最近知った。最後のオーストリアハンガリー二重帝国皇帝の皇太子、最後までハプスブルグ帝国的な統一ヨーロッパを目指し、欧州議会議員も務めた政治家でもあった。壮麗な葬儀でもってハプスブルグ家の菩提寺に伝統的な儀礼のもと埋葬されるのは、おそらく彼が最後だろう。葬儀にはヨーロッパの多数の王家から参列者が来たそうだが、ほとんどすべてがハプスブルグの血をどこかかしらで継承しているのだろう。


葬儀の行進


高位聖職者(司教杖を持った大司教他)に先導される棺


納骨堂へ入るための古式に則った儀礼 knocking ceremonyというらしい。

英訳発見。一回目の肩書きがすごすぎる。21世紀とは思えない。辺境伯ですよ?


Prior: Who desires entry?
(入ることを望むものは誰か) 問うのは修道院長。カプチン会士はフランシスコ会でも灰色ではないのですね。


MC: Otto of Austria; once Crown Prince of Austria-Hungary; Royal Prince of Hungary and Bohemia, of Dalmatia, Croatia, Slavonia, Galicia, Lodomeria and Illyria; Grand Duke of Tuscany and Cracow; Duke of Lorraine, Salzburg, Styria, Carinthia, Carniola and the Bukowina; Grand Prince of Transylvania, Margrave of Moravia; Duke of Upper and Lower Silesia, of Modena, Parma, Piacenza, Guastalla, of Oświęcim and Zator, Teschen, Friaul, Dubrovnik and Zadar; Princely Count of Habsburg and Tyrol, of Kyburg, Gorizia and Gradisca; Prince of Trent and Brixen; Margrave of Upper and Lower Lusatia and Istria; Count of Hohenems, Feldkirch, Bregenz, Sonnenburg etc.; Lord of Trieste, Kotor and Windic March, Grand Voivod of the Voivodeship of Serbia etc. etc.
オーストリア人のオットー、かつてのオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子。ハンガリーボヘミア、ダルマテチア、クロアチアスラヴォニアガリシア、ロドメリア、イリリアの公子。トスカーナクラクフ大公、ロレーヌ、サルツブルグ、スティリア、ケルンテン、カルニオラ、ブコヴィナ公。トランシルヴァニア大公。モラビア辺境伯。上下シュレジエン、モデナ、パルマピアチェンツァ、グアスタラ、オシフィエンチム、ザダル、テッシェン、フリアウル、ドゥブロブニク、ザダル公。ハプスブルグ、チロル、キブルグ、ゴリツィア、グラディスカ候伯。トレント、ブリクセン伯。上下ルサティア、イストリア辺境伯。ホヘネムス、フェルドキルヒ、ブレゲンツ、ソンネンブルグらの伯、トリエステ、コトル、ヴィンディックマルシュの主人、セルビアの司令官職の司令官等々。)


Prior: We do not know him.
(我々は彼を知らない)


(The MC knocks thrice) 杖で三回叩く。


Prior: Who desires entry?
(入ることを望むものは誰か)


MC: Dr. Otto von Habsburg, President and Honorary President of the Paneuropean Union, Member and quondam President of the European Parliament, honorary doctor of many universities, honorary citizen of many cities in Central Europe, member of numerous venerable academies and institutes, recipient of high civil and ecclesiastical honours, awards, and medals, which were given him in recognition of his decades-long struggle for the freedom of peoples for justice and right.
(オットー・フォン・ハプスブルグ博士、汎ヨーロッパ連合の議長にして名誉議長、欧州議会の成員にして前議長、多数の大学の名誉博士中欧の多くの都市の名誉市民、無数の由緒ある学士院と研究所の成員、高潔な市民的教会的名誉、賞、勲章の受領者、それらは公正と正義のために人びとの自由への数十年にわたる努力を表敬するために与えられたものである。)


Prior: We do not know him.
(我々は彼を知らない)


(The MC knocks thrice) 杖で三回叩く。


Prior: Who desires entry?
(入ることを望むものは誰か)


MC: Otto, a mortal and sinful man.
(死すべき罪深き人間です。)


Prior: Then let him come in.
(ならば彼を入れなさい)


ものすごくキリスト教的な儀礼。どれほどに立派な人でも死んでしまえば地上の名誉も地位もすべて意味が無く、神の前の単なる罪人。人は塵から作られ、やがて塵に返る。神聖ローマ皇帝、ドイツ皇帝、スペイン王、二重帝国皇帝等を世襲してきたヨーロッパ随一のハプルブルグの最後の儀式としてすばらしい。