さいはての島

さいはての島へ―ゲド戦記〈3〉 (岩波少年文庫)

さいはての島へ―ゲド戦記〈3〉 (岩波少年文庫)

生は死があってこそであり、死がなければまた生も無し、というのがテーマかな。死を恐れ、死ぬことを拒否し、永遠の生(あるいは死後の蘇り)を狂おしく求めた人物によって生じたなにもないところへの穴へ、生きることそのものが流れ去ることによって、生である魔法や、言葉や、歌詞や、技術が消え去る。それを大賢者として、つまりおっさんとして現れたゲドが、育ちと血筋だけがいいだけの少年をともなって命ともいえる魔法の力をすべて使い尽くすつもりで世界を救いに旅立つ物語。ゲドが力を失う代わりに、そのゲドに従った少年が成長し、その運命であったアースシー全土の王の玉座に800年ぶりに座るにふさわしい少年となって帰ってくる、というところが、主人公がおっさんになったとしてもジュブナイルとして成り立っているんだろう。


しかしなんでわざわざこれを映画化したんだ、パヤオの息子。言葉が失われるという状況がこわいし非常に暗いテーマだし。少年の成長物語であり最後に二人で伝説的な最長老の竜の背中に乗ってひとっ飛びする絵柄がすばらしいからなんだろうか。
原作を読んだことのない人にとっては、それなりに面白かったらしいが、誰が主人公だか分からなかったそうだ。本名はみだりに唱えない世界観だから、ゲド、なんて原作でも5回ぐらいしかでてこなかったわけで、その説明がなければ誰がゲドだか分からないようだ。