戦うことと裁くこと

戦うことと裁くこと―中世フランスの紛争・権力・真理

戦うことと裁くこと―中世フランスの紛争・権力・真理

11〜13世紀フランスにおける、騎士から王までの領主と、聖遺物を武器にする方法を編み出した教会という二つの「戦うことができるもの」同士の、お互い「容易に裁かれることができない」状態における紛争解決について。「戦うことができる」=「容易に裁かれない」という図式であるから、領主同士の紛争解決ではそれが「和解」という形が落としどころになる。逆に「戦うことができない」=「容易に裁かれる」という図式になることで、領主裁判権が効いてくるわけで、教会がなにも「貧しく弱いものたちのための組織」ではまったくない、という状況も説得的に説明され得る。
そしてこの状況が13世紀になって「証人尋問」という制度が徐々に裁判に入ってくることによって、社会の大きな変化をもたらす、あるいは13世紀が転換点であることの大きな傍証となっている。
展開としては面白いし(個人的には13世紀に入る当たりから自分の興味から外れていくのだけれど)、なによりも論文ってこう書くんだね、のすばらしい実例を見せてもらった。見せてもらったけれども身に付けるのは難しいね、まったく。