The Amber Spyglass

The Amber Spyglass (His Dark Materials S.)

The Amber Spyglass (His Dark Materials S.)

ライラの冒険シリーズ三部作最終巻。
1巻はツン、2巻はツンデレ、最終巻はデレ100%。
この世はすべてfate、これ以外何もない、そして何かに抗い何かを希求し以下に行動しようともそれすべてfate、だからといって別にそれは不幸ではないし、自分があずかり知らないところで誰かが幸福になっていることもあるし、それを知っていようと知っていなかろうと人生は進む、そんな感じ。
娘を娘とせずに放置し、場合によっては娘を自らの恐ろしい目的のために利用し、あるいは自らの目的のために娘の存在のみを利用しようとしたのもfate。愛さず、育てず、歪んだ形で愛を再発見したのもfate。期せずして妻と息子の元を永遠に去らなくてはならなくなったのもfate。猫が目の前に現れたのもfate。人が自意識を持ち知識の実を口にしたのもfate


ライラはデレながらも自らの意志に忠実に、母の元を脱し、ウィルはいろいろなものに助けられながらも自らの役割をしっかりと果たしてライラを助け、多くの人びとが彼らの後押しを自らの分担としてこなし、人間が神と崇めていた哀れな全知全能者と、そのRegentを滅ぼし、死者の国は開放され、死んだ後人びとはすべて自然にとけ込んで安寧を得る、という、この部分ははっきりとアンチキリスト教的話であったが、そんな壮大な設定の元での少年少女の成長物語でもあったわけだ。
終わり方は賛否両論、という話を聞いたが、個人的にはこれはこれで言い終わり方。ハッピーエンドではないけれど、元の鞘に収まった形。多くのものを失いはしたけれども。願わくばウィルのお母さんが元気になって、母と息子としての生活がこの先にあれば良いな、と。