ロカノンの世界

ル・グインのSFと称される物語を読むと、SFとファンタジーの垣根の低さを感じる。そしてこのル・グインの最初の長編はひどくそう感じさせる。SFのガゼットに囲まれた、ファンタジー。もの悲しいプロローグも、苦しく辛い本編と、最後に得た力とそれによる喪失と、エピローグの淡々としたその後と、そして「ロカノン」という名が意味するものと、その流れは叙情的な幻想小説に他ならなかった。
時々ふとシーンが飛んだりするところが気になったが、それすらもファンタジーということで許せる気がする。SF作家としてのル・グインと、「ゲド戦記」の作者としてのル・グインは、まったく乖離しておらず、ガゼットのあるなしだけの問題なのだな。
『闇の左手』の方がはるかにすばらしかった感は否めない。異星の文化に対する主人公の葛藤の無さが少々残念な出来ではあった。