わたしを離さないで

わたしを離さないで

わたしを離さないで

GWだからか、たがが外れたみたいに本を買うことと読むことに耽溺してしまった。


読んだこともないし観たこともないが、予告編とか、チラリとどこかで見た話のふりとかでは、「日の名残」は古き良きイギリスを舞台にしたものすごく純な文学だと思っていたので(多分、これは本当だと思うのだが)、イシグロ・カズオはその手の作家だと思っていた。
そうじゃなかった。
この話はこれ全くのSFだった。
介護人であるキャシーの、幼少時代から少女時代までを暮らした施設での日々を、介護人としての終わりが近づく現在思い起こして話が進む。少女の性格描写がやけにリアルでイシグロ・カズオは女の子だったのか、と思ってしまう。女の子だったらあそこまで開き直れない、かもしれないが。なのにものすごく淡々としている。淡々としすぎている。だから余計その恐るべき運命に戦慄する。


そしてSFであることに気付かせるまでの話の流れが恐ろしくうまい。2日で読み切ってしまった。しかもSFであることをほとんどすべて開陳してからの話の流れが予想を越えて悲しすぎる。なぜそこまで運命を受け入れてしまえるのか。唯一運命にあらがいたい気分を表していたのがトミーの叫びだけとは。
生きるとは、生かされるとは、生きる上での教育とは、それぞれの愛とか、正しいもは何か、自分はどちら側に立っているのか、考えるのが嫌になる終わり方。キャシーはやっぱり淡々と運命を受け入れてしまうのだから。