『法が生まれるとき』

法が生まれるとき

法が生まれるとき

決定的に、私には法制史は良く分からない(理解力が足りない上に興味があまりない)ということを確認させてくれた。この本に関してもう一つ言えるのは、私が知りたいと思っていたこと(タイトルから想像していたこと)と、そこに書かれていた主題に大きな乖離があったことが、残念であった、ということか。
初期中世に関する論考では、全体的な内容としては非常に興味深かったが、アイルランドにはローマ支配時代がなかったことが問題になってしまった。それがある上での共通理念を求めたのだが、史料上、想像するだけにとどまってしまうところまでにしか行かなかった。代わりに、意外なことに後期中世の論考ではかなり教えられることも多く、初期中世だけに拘るのは自分の問題かもしれないと気付かされた。


個人的には中国史の話はおもしろかった。それる方向に向かうものを、それでも何とか正道にただそうとする動き、というのはある意味大河ドラマであった。イスラームの法と正義の不可思議さは、まったく理解できない別世界のようで、現在の世界の紛争の基本問題はそこにあるのがよく分かる。日本史については、唯一繋がりの持てた日本の論文ではあり、非常に分かりやすかったのだが、日本史を文字化するのは、因果なことだね、という印象の法が、内容より強く持たされて、ちょっと残念。


結局、某先生からバンっと問われた「慣習法ってつまり何?」に対する答えはいまだに見つからず。則るように期待された規範あるいは「人びとの行為の指針」ということ、では多分いろいろ足りない。