辺境のダイナミズム
まだ選挙も始まっていないのに名前を連呼する車を走らせ、選挙中は遠慮する信号待ちでも名前を連呼するのはいったい何なの?
- 作者: 小澤実,薩摩秀登,林邦夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/03/24
- メディア: 単行本
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219ページのトゥール・ポワティエ間の戦いで、フランク軍は「イスラーム軍を大敗させ」という表現はちょっと動かと思う。これではフランクがイスラム全体を負かせてヨーロッパを守った、という通年のままなのだが、このあたりの専門家としてこの表記は問題ないんだろうか。それから最終章が蛇足。3部で書ききれなかったものを書き足していると思わせることが多すぎで、相違が大きく三つの地域のまとめを総括するのは難しいとしても、記述に偏りが目立つ。3文を読みながら「イスラム、イスラムといっているがここって実はイスラム教・キリスト教・ユダヤ教の三大宗教地域じゃ」という部分がここで語られているのが残念(文化史で突然出てきたユダヤ人の説明はその前にあって欲しかった)。さらに、311ページの、一文に現れている「フリードリヒ2世」と「フェデリコ2世」は同一人物ではないのだろうか? もしそうだとしたら記述は統一してくれないと困るなぁ、と。
私にとってはほとんど知らない地域であり(南欧が辺境か、といわれると初期中世史としては「世界の中心じゃん!」と思ってしまうのだが)、それなりに楽しかったが、後ろに行くに従ってちょっとね、という微妙な感じになるのが読後感としては非常に残念。第1部が最もきれいにまとまっていた、という構成がなんかね。