ヴァイキングによるアイルランドの教会襲撃

Viking Raids on Irish Church Settlements in the Ninth Century: A Reconsideration of the Annals (Maynooth Monographs Series Minor)

Viking Raids on Irish Church Settlements in the Ninth Century: A Reconsideration of the Annals (Maynooth Monographs Series Minor)

通例言われてきたこと、「850年以降しばらくヴァイキングによるアイルランド修道院教会への襲撃は収まり、40年後、第二波が襲ってくる」、について疑問を呈し、年代記(Annals)の記述を丹念に洗い、その他の教会に関する記事、語彙を徹底的に吟味することで、実はそうではなかった、ということを主張しようとする短い論文。
作者(本人はウッディ・アレンにそっくり)のお約束的武闘派な(反論対象をまず最初に挙げてから執拗に攻撃する方法)ものであったが、勢いとして彼の主張には納得させられてしまう部分もあるのだが、彼自身書いている通り、他の地域(アイルランド外の)スカンジナビア人たちの活動を述べずして、「アイルランドの教会についてだけ焦点を当てることを主とした」だと、その他での活動をまったく知らないものとしては、そのあたりの情報を無視して(紙面の制約もあろうが)そこまではっきりと結論づけられるのか、については疑問が湧く。
9世紀以降のアイルランドにおけるヴァイキングの活動(その後の植民地の政治社会的状況も含めて)の研究の難しさだけはよく分かった。うへあぁ。