ビクトリア時代の本

ヨーロッパをさすらう異形の物語〈上〉―中世の幻想・神話・伝説

ヨーロッパをさすらう異形の物語〈上〉―中世の幻想・神話・伝説

19世紀後半が初出なのでしょうがないといえばしょうがないし、逆にだからこそと思えるのは、ヨーロッパ中世に広く流布した不思議な物語の源流を「アーリア民族」という括りで「リグ・ヴェーダ」までさかのぼってしまえることか。最近では言語学でもあんまりやらないという話だが。
21世紀の研究者の卵としては、源流がどこにあるとかどこそこのなんの話と同一であるとかいうのは興味深いとは思うが(元々そういうのが好きであったし)、なにゆえその話がそういう形で中世に広く流布したのか、記録を残した人々の立場の違いやら地域の違いやらで現れた違いはなにゆえであるか、という部分の方が引かれるが、自分でやるのは大変そうなのだ、というのが正直な感想か。作者の博識であることは分かった。というかすごい博識。かつてはこれぐらいの人が研究をしていたわけだよ、トホホ。
神話とか、ナラティブとか、伝説とかを中世ヨーロッパと結びつけて勉強したい人には、一つの提案として読むにはいい本かも。想像は膨らむ。