Magdalen sisters

マグダレンの祈り [DVD]

マグダレンの祈り [DVD]

マグダラのマリヤの姉妹たち、すなわち娼婦であり、堕落した悪女であり、贖罪によって救われた女性たち。
内容はあまり書きたくないのが正直な気持ち。(詳しい内容はこちら。ただし英語だけど)
レイプされたり(完全なる被害者)、ちょっと美人なので男の子たちに声をかけられたり(かなり受動的)、未婚の母になったり(相手がどういう人間であるとかどういう理由で子供を産んだかはまったく斟酌されず)、そのような「性的堕落者」の烙印を押され、社会から、家族から拒絶された女性たちの矯正施設、Magdalen asylum (あるいはinstitute)。キリストによって許された者となるための「贖罪」を行う名目での長時間の強制労働、監禁、精神的肉体的虐待、そして場合によっては聖職者による性的な虐待が行われた、アイルランドに90年代後半まで残っていた施設の、実話を基にした物語。「慈悲深い」はずの修道女によって管理された、強制労働収容所であり、監獄である場所。
話は恐ろしいほど淡々と進む。
時代は60年代。アメリカのウーマンリブ活動の直前。天と地以上の差。教会による性に関する恐怖を植え付ける時代が、いったいアイルランドではいつまで続いていたんだろう。ここ数年のアイルランドからはきっと想像もできない時代。でも、ほんの十年ぐらい前では、「ものすごく保守的だなぁ」と思うところもあった記憶もある。
実は最後の施設が閉鎖されたことについて、かつてどこかでその記事を呼んだ記憶があった。新聞だったのか雑誌だったのかはたまた何らかのアイルランド関係の書物だったのか、すでに記憶には残っていないのだが。
さすが西洋唯一の第三国、文化的に(反動的に)ゆがめられた国、離婚すらほんの10年ほど前まで認可されなかった、宗教的超保守国、と分かっていても見るに堪えない映画だった。10年ほど前に書きに短期留学していた時に、司教による性的虐待の裁判が開かれていて、またその司教が開き直った顔で新聞に載っていて本当に酷い、と思っていたが、去年の秋までの2年間の留学中にもその手の司教の話をちらほらニュースサイトで見ていた。
ボッカチオか、カンタベリー物語か。まるで中世のカトリックの暗部が現在に蘇ったようなイメージ。


DVD特典映像の方が衝撃度は大きかった。実際にその施設に収容され、それによって人生をゆがめられてしまった女性たちが、涙ながらに当時の状況を語っていた。ただ単に、美人だからという理由で8年も収容されていた女性すらいた。収容した側としては「性的な堕落に落ちる前に救ってあげた」という傲慢なもの。傲慢は七つの大罪で最も重い罪だ(特にそれが聖職者ならば)。