秦帝国

香乱記〈1〉 (新潮文庫)

香乱記〈1〉 (新潮文庫)

文庫で4巻本の最初の巻。
知らずに当代一の占い師(人相見)に全員王になるだろうと予言された田(でん)三兄弟(一人は従兄弟だが)、
その末弟が主人公。王となるに七星を集める必要があり、最初の巻ですでに波瀾万丈。
敵に命を狙われ、間一髪助かると、高貴な血を引く男装(?)のお姫様を助け、皇太子の食客となる。
時はまさに始皇帝時代の末期、天下動乱の予見がありあり、という、もうなんというRPGですか〜、
という展開。宮城谷の手にかかると古代中国は英雄だらけだ。
彼の書くものはかなりの数が悪く言えば「ご都合展開」なのだが、そのように感じられない理由はおそらく、
主人公たちが単に運命に良くも悪くも翻弄されるのではなく、仁に深く、義に篤く、徳が高く、
それによって正義を貫いて運命を切り開き、英雄の英雄たらん生を全うするから、に違いない。


彼の作品の中で始皇帝は何度か出てきたが(主人公になったことはない)、
ものすごく心の貧しい人、という共通イメージがあるなぁ。