メモとして(アイルランドのking, lordの望まれるべき資質=理想像)

初期中世の法律及び中期〜後期中世までのナラティブ史料より。

  1. 支配下の人々と対等でありお互いに相互義務を負いそれを果たす者
  2. 権威と責任の間でバランスのとれた行動をなす者
  3. 彼らに対して責任を負い、代理人となって交渉を行うことによって家人(kinsmen)、従属者、ケーレのリーダーとなれる者
  4. 彼らの間にあって命令を下し、彼らのために契約や従属、戦争を行う者
  5. 争乱を起こしそうな家人、従属者、貴族(王である場合)に注意をし、なだめたり力でねじ伏せたり、法的・経済的に制裁を下せる者
  6. 聖職者や「詩人」(=社会的身分の高い者である知識階級)を害することの無いよう目を配る者
  7. 寛大さ、剛胆さ、公正な裁き人の様な支配者としての資質を表せる者
  8. いかなる意味においても自らに与えられた身分を傷つけるような行動を起こさぬ者

これらを全うすることによって自らが保護すべき人々からの服従と利益を得ることが可能となる。従属者の第一の者は彼らの弟たちである。(従属者であり家人でありケーレであり得る)


これらを全うすることができない場合、年下の者、先祖の弟たちの子孫から、その地位に対して挑戦される。=>長子相続制、ではないが、長子(兄弟間でもあり、従兄弟間でもあり、分家間でもある―seniority、年功制)が一族の長となる特権と義務双方を担うのが、法的には決められている、ように読み取れる。(財産=主として土地)は公平に分けられるが、長子にはその特権及び義務のために、それ専用の財産(=土地)を得る。問題は、これは父から子へと直接受けつがれるという前提にはない財産であること)。また、この法律によって、一部の者(=長子の子孫、年功が上の者からの子孫など)の社会的上昇と、それによる他の者の社会的下降が生まれ、数家で王位を交換相続することになる(=dynastyごとの有力家系)。


この状態が遅くとも16世紀まで続いていた、ことになっているゆえに、中世のアイルランドでの王位、貴族の相続が家系図で見ると甚だしく複雑になっているわけだが、長子完全相続、並びに唯一残された女性相続者の土地相続、その後の夫の家系の土地との統合による巨大国家(アンジュー家のような)となるような大陸(含むイングランド)の相続制度は、いつ頃、なにを起因として派生したのだろうか? ああ、勉強不足・・・。kinsmenは家人、ではないか。家人はhouseholdか。
さて、北欧とこのあたりで比較検討なりできるであろうか。


Early Irish Kingship and Succession