よく考えるとものすごい設定

クリスタル☆ドラゴン (Vol.1) (秋田文庫)

クリスタル☆ドラゴン (Vol.1) (秋田文庫)

『クリスタル☆ドラゴン』って簡単に説明しようとすると、

ネロ帝時代のアイルランドブリテン・北欧・アイスランドガリア・ローマを股にかけた、取り変えっ子かもしれないと自ら疑うアイルランドの一少女の、復習の助け手を探す旅の物語

となる。ものすごい設定だ。しかもかなり時代背景が綿密に調べられているところがすごい。「キア」という名前の女の子の、名前のルビが「誰?」というのも古アイルランド語の「cía(キーア)=who?」とほぼ合致するし、「女相続人」のルビの「バンコアルバ」は現代アイルランド語の「bean(バン? ベアン?=女)」と「comharba(コールバ?=相続人)」というのをくっつけったぽいし、バイキングの葬送で棺代わりの船は燃やすし、セーヌ川じゃなくてセクヮヌ(ラテン語)だし、ネロは歌ってるし(笑)、アイルランドのことをエリン(アイルランド語によるアイルランドを表す雅語)と呼んでるし。
アイルランド人はみんな金髪とか「真名」と「通り名」がある、っていうのはまあおいておいて、だ。1981年4月から途中どばっと休載しながらも今のところまだ連載中(休載中、なのかも。また放置プレーか)、っていうのは、長さが問題ではなく、80年代初頭においてはまだそれほどアイルランド古代・初期中世関係で日本語で読める本はほとんど無かったろうし(初期中世史の古典、盛節子先生の『アイルランドの宗教と文化』は1991年出版だ)、どうやって調べたのか本当に不思議。あしべゆうほってじつは英語が堪能とか?