今市子三連発

僕のやさしいお兄さん 1 (花音コミックス)

僕のやさしいお兄さん 1 (花音コミックス)

盗賊の水さし (eyesコミックス)

盗賊の水さし (eyesコミックス)

夜と星のむこう 第1巻 (SGコミックス)

夜と星のむこう 第1巻 (SGコミックス)

一つ目はBL。珍しくカップル同士が思いっきり両思い。
二つ目は『岸辺の歌』のシリーズ三作目。主役かな、と思っていた二人がシリーズであることを表すための記号と化してしまった感じ。狂言回しにもなっていない。ただし「水の少なさ」と「砂の世界」という世界観は変わっていないので、敢えて二人が出てこなくてもなんの違和感もない。ハードコンタクトしてる人間としては目がしばしばしてくる感じがするが。そういえばこの作者ってこの「水」と「砂」の関係の話って意外に多いな。NHKの「シルクロード」(石坂浩二のナレーション)がかなり好きなんじゃないだろうか。
三つ目はホラーというか、『百鬼夜行抄』のここ最近のやや暗い、怖い感じの話を彷彿とさせるもの。


彼女のBLってほぼすべて「疑似家族」というか、いわゆる一般的に家族といわれるもののメンバーからはみ出すとみなされる関係しかないものたちが、同じ場所に住み、血縁、地縁、心的縁というものが絡み合い、本当の家族になることを求め、探し、最終的に何らかの形でその答えを得る、という話が多いと思うのだが、これもまさにそんな感じ。父親不在、というのもわりと共通している。今のところ、この話では男三人、女一人(役割「お母さん」)の「家族」になっているが、おそらく他の関係者が出てきて更に絡み合った状態になるんだろうなぁ、と思わせる。その複雑な関係をかなり上手に料理するところが、今市子の好きなところだ。ちなみに、登場人物たちの顔の判別がやや難しい、という絵であることを逆手にとったところがあって(あくまでもわたしの見立てでは、なんだが)、そこが逆によいと思えるところだった。ここのところ人物の見分けが付かなくてかなり読みにくくてどうもなぁ、と思っていたもので。作画が荒くなったとか劣化したとかそういうことじゃなく、それがいま現在のこの作者の「イロ」と考えることが十分にできるわけで。で、BLではないのだが、三作目の話も家族関係が少し変。これに民俗的な香りが漂うんだがなんか登場人物たちの反応が意外に深刻じゃないので、ネタとしては怖いんだが、重くないのがいい。BLじゃないが男三人(正確に言うと「人」で数えられなさそうなのが一人)の絡みが微妙。