Kay, Guy Gavriel, The Summer Tree (The Fionavar Tapestry: Book 1)


The Summer Tree: The Fionavar Tapestry Book One (Finovar Tapestry)
すみません、確実に歴史文献よりも速く読んでる。うう。基本的にはご飯の時と夜寝る前に読むだけなんだけど・・・(ある程度とばし読みしてるから、と自己弁護)。
7年前にハヤカワ文庫から翻訳が出て、あ〜〜〜っという間に絶版(ハヤカワには建前上絶版というものはないらしいんだけど、事実上の絶版)になってしまった、シリーズもの(3部作)の1冊目。ハヤカワはシリーズものにもかかわらず、1冊で手を引いた模様。まさに放置プレイ。多分、この放置プレイで泣きを見た人はたくさんいると思う。この本だけじゃないと思うぞ、この会社のやり方。
まあ、端的に言えばあんまり売れなかった、ってことなんだろうけど(出版業者は大変なんだよね)。ハヤカワ文庫のファンタジーは、多分軒並み絶版なんじゃないかと思う(SFもね)。内容的(作者は元々SFものの書き手、らしい)にはファンタジーの「氷と炎の歌」シリーズは、SFとして出版してるが、これも「ファンタジー」と銘打つと売れないからなのか、作者のイメージがSFとして固定されているからなのか。まあ、SFにせよファンタジーにせよ、日本だとあんまり売れない部類だよな、とは思う(アメリカ・ヨーロッパだとそもそもその二つはあんまり区別されてないし)。そんなのが好みなのがしょうがないよな、とも思うけど、放置プレイは無しにしてくれ。
なにやらこの作者、ガイ・ゲイブリエル・ケイは、トールキンの死後に出版された、『指輪物語』の前史となる『シルマリリオン』の出版に深く関わっているようだし(編集したトールキンの息子、クリストファーのアシスタントをしていたみたい)、このシリーズはネタ的に「ケルト」らしいので(ウェールズらしい。私は『マギノビ』すら読んだことないのでよく分からないが、主人公の一人ポールが、舞台となる世界ではプウィル(Pwyll)になるところは、確実にウェールズ。名前だけかよ、私・・・)、今もう一回がんばったら売れるんじゃないか、と楽観的観測をしてみたのだが、いかがか、早川書房さんよ。
日本語版を読んだのが相当前で、放置されたので読み返す気にもなれず、かなり久しぶりに読んでみたら、ずいぶん印象が違った。っつうか、終わり方が全然違う気がするんだが、そんなことないよな。日本に帰ったら確認してみよう。英語はやや読みにくい。平易な英語じゃなくて、トールキン的な倒置多様とか、ドイツ語じゃないけど枠構造的な文章だったり、単語の選択が古めかしかったり。多分、ネイティブには分かる雰囲気作りだろうが(「十二国記」シリーズの単語の選択みたいな感じ)。
テーマは非常に良くある形。二十年前のものだからしょうがないと思う。基本的には光と闇、というか善と悪の闘い、エルフ、という表記はないがそれらしい存在もいるし、その対照としてオーク的な存在もいる。ドワーフもいる。神々も出てくる。神々が善悪の次元を越えている(ラスボスは思いっきり悪なんだけど)ところは良い。それからパラレルワールド、というのも今だとありきたり。
でも自分としては面白かったし、やっと7年間の放置プレイから解放されるので、続巻が楽しみである。なんか読書感想じゃなくてハヤカワに毒吐きたかっただけちゃうんか、私? たまには正統派ファンタジーも楽しいものだ。