マイケル・ムアコック『メルニボネの皇子』
メルニボネの皇子―永遠の戦士エルリック〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: マイクルムアコック,Michael Moorcock,井辻朱美
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/03/01
- メディア: 文庫
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白髪、赤い目のヒーロー主人公のヒロイックファンタジー、らしい。初めて「エルリック」という名前を知ったのは、奥瀬サキ(旧・奥瀬早紀)の『火閻魔人』の一コマ。どこだったか思い出せないし、今手元にない。だいたい、今入手可能なのかどうかも不明。良く手に入ったものだ、というぐらい寡作の人で、しかも現在は漫画活動してなさそう。キャラデザインと漫画原作だけかも。ちょっと残念。
で、まあ、「ダークヒーロー」としては名高いようなので、読んでみた。確かに、あんまり健康ではなく、薬に頼ってやっとこさ生きていて、薬が切れるとヨロヨロボロボロになって「もう死んじゃうかもー、あー、あれしなければ良かった、これすれば良かったー」とウダウダするのが、ヒーローっぽくはないのだが、これが出版された当時は珍しいヒーロー増加もしれないが、現在だとそれほどでもないし、敢えて「ヒロイック」と表明する意義も意味もなくなってるかもしれない。
悪(作中では「混沌」)の神(対するのは「法」の神で、多分意味的には「善神」)に頼り、それに関わる魔法を使って、それから生まれた、人の魂を吸う黒い魔剣(まさにまるマシリーズの「魔剣」なんだが)を使う、というところは「ダーク」なんだろうが、それを使うことへの葛藤、という部分がほとんどない。とにかく自分の行動、自分の考えについてのウダウダしい内省がほとんど。
そこがかえって私には魅力的だったので、これだけ世界的に大ヒット、超有名ファンタジー小説の主人公なんだろうな、と思った。単純に言えば面白かった。
しかしなぜハヤカワは、SFというカテゴリーで出したのか? そしてやっぱり表紙は往年の天野喜孝の絵が良かったなー。