小川洋子『博士の愛した数式』

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

これは朝まで寝れなかった日に読んだ本。金曜の深夜、というか土曜の早朝。
単行本の時からずーっと気になってて、本屋大賞になってさらに気になってて、3月に帰国した時に文庫で発見し、即買い。映画化はその帯についてたので、知った。映画化しなくてもいいじゃん、売れたからって。売れた本→即映画化、というのは止めて欲しい。たいした理由はないが、どんなに短い本でも映画化することによって省略される部分ができてくるし、監督や脚本家の読み方が映画に出てくるから。

観なければいいのか!

それはさておき、非常に淡々と、過剰な装飾無し、それでいて主人公たちの心の動きとか、気持ちとか、優しさ、悲しさなどを行間から感じさせてくれる文章。いい。自分では絶対無理。
帯の煽りの「あまりに悲しく暖かい奇跡の愛の物語」っていうのはちょっとはずれてる気がする。暖かな愛の物語、なら分かるんだけど、「あまりに悲しく」っていう話ではないと思う。まず、お涙ちょうだいじゃないし。この、淡々と進むお話で、過剰な煽りは止めようよ、出版社。それから、「奇跡」っていうのも。どのあたりがどう奇跡なのか、よく分からない。
人間、どんな障害があろうと、どんな問題があろうと、相手の気持ちを思いやれば、子供だって、百パーセントではないけれど、理解し合ったり、仲良くなったりできるんだね、っていう話じゃないのかなぁ?


パチョレックとか亀山とか、そのあたりがちょっとツボに入った。数学だけじゃなくて、野球を相互理解の、あるいは相互不理解の道具にしているところが、面白いし、上手。