英仏百年戦争

英仏百年戦争 (集英社新書)

英仏百年戦争 (集英社新書)

作者の意図は、百年戦争を順を追って語るのではなく、「英仏」ではないこと、「百年」戦争でないこと。その初期はフランス人(という用語を使ってしまうことに一般書の限界があるのだが。作者自身が「フランス」人を否定しているのに)の、領主間の対立であって、間違っても国家同士の対立ではないこと、そして百年の長きにわたる戦い、ではないことをくどいほど繰り返している。「百年戦争」の後期に至ると、「国家」の認識が、特に大陸の領地をかなり失ってしまったイングランド側の法に顕著に表れて来ることが述べられている。ジャンヌ・ダルクの「フランス人感覚」は個人的には力業に思えたが、それでも説得的に書かれているので、これは学ぶべき論の進め方だな、と思った。そんなに簡単に学べれば苦しみもないのだが。
英仏百年戦争によって、英仏ができた、という終わり方はきれいだ。また、さすが作家、というリーダビリティもあった。作品としては『カエサルを撃て』しか読んだことがなく、読みに難くて辟易したのだが。アレはワザとな語り口だったのかな。小物カエサル、は良かったんだけれども。


世界史ってこういう話をして学ぶべきなんじゃないだろうか、と受験生と接していていつも思う。何年に何が起こった、というより何世紀のどれぐらいにこういう動きがあったんだがその背景は、とか、その後の推移は、とか、こう大局的にね。