栽培植物と農耕の起源

栽培植物と農耕の起源 (岩波新書 青版 G-103)

栽培植物と農耕の起源 (岩波新書 青版 G-103)

書かれた年が古いので「土人」などという表現が多々あったり、なんだか主部と述部があってないな、という部分があったりしたが頑張ってスルーした。
内容的には非常に面白かった。農耕文化、つまり栽培植物の種類によって文化を分けるとたった四つに集約される、という話と、それらの植物がいかにして栽培手となり農耕へと発展したか、という二点が中心的話題。
東南アジアからインド南部、そしてアフリカの中央を横断する地域の特徴的な植物となるものは、根菜(バナナも含む)。毒があったりアクの強い根菜を水で晒す、というのが重要。ネパールから中国南部、朝鮮半島、日本の本州の西部までが、しょうよう照葉樹林文化で、ここの特徴はお茶と麹を使った発酵食品(酒も含む)。もちろんここに根菜文化も入っていて、日本だと里芋ととろろ芋とこんにゃくいもが特徴的。こんにゃくいも系は全て「毒芋」というのは驚き。アフリカやインドの乾燥地帯及びその周縁部の湿地帯はサバンナ農耕文化で、要は雑穀類とウリ、豆類が主要な食物となる地域。米もこれに当てはまるので。日本を含む照葉樹林文化はこの影響も受ける。四つ目が地中海農耕文化で麦類全般。
穀類で栽培植物となったのは全て一年生である、というのも驚きだし、陸稲から山間の水田、さらに並置での大規模な炊煙を得るようになって始めて大きな政治体ができるようになったというのも考えてみればそうかも。麦に関しては大規模な灌漑農業によって収穫量増大、余剰食物の蓄積、帝国の誕生、という順で、中世ヨーロッパでの小麦の石高がメソポタミアよりも圧倒的に少なかったのは、中世の農耕文化の程度が低いからというより、大規模な灌漑を必要としない小麦(と大麦)へと変化した部分の大いにありそうな気がした。
南北アメリカは上記のうち三つの文化の複合であったが、とくに来た目理科では農耕文化の寸前までいっていたがそれ以上進まなかった、という話で、アジア大陸は横に長く、南北アメリカは縦に長い、という農耕に関しての地理的不利の付いての視点というのはこの本が書かれた時代ではいわれていないことなのね、と思った。


お茶はすごい、という話だ。