沙門空海唐の国にて鬼と宴す・1、シェルブリット・1、黄金の王 白銀の王

煮込み料理二周目に入りつつある。


全部角川文庫。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ1

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ1

空海橘逸勢遣唐使として唐に入ったら怪異がいっぱい起きて、空海がいろいろな技を使って倒していく、という話になるのかな。こんなに長大に続く話だとは思わなかった。1巻で多少は事件の解決を、と期待していたが、触りだけだった。空海と逸勢の関係性が安倍晴明源博雅の関係にだぶって見えてしまうのが問題。晴明と同じく空海もなんだか分かるような分からない話を、こちらは「密教」という視点から語ったり、思わせぶりなことを言ってみたり、飄々としていたり。ただ、当時の世界の文化的、経済的中心として長安が書かれており、胡人がいたり、吐蕃からきた人がいたり、インドと漢人のハーフがいたり、という舞台設定は魅力的だった。みんなが唐の言葉で意思疎通、というところで、ソグド語は? とか、空海が半分インド人からサンスクリットを学ぶ、というところで当時のインドの言葉で原本が読めるの? とかちょっと腑に落ちないところもあったが。多分、続刊はお金と時間がたんまりあったら読むだろう、ぐらいの話。夢枕獏ってどうなのか分からんなぁ。


幾原邦彦永野護(どちらもよく知らない)が描くハードSF、という煽りの「ハードSF」にだまされた。中二病爆発的な注としてのアステリクスがまずうるさい。研究書以外でこんなのみたくない。巻末に用語解説が大量に付いているが、話を読んでいればおおよそ分かる。裏設定いっぱいあるで〜〜〜、ということなんだろうが、そういうのは話を進めるうちに出し、説明して欲しい。それがSFの醍醐味じゃないか(説明無い場合もあるけど、それはそれでまた醍醐味)。そしてどんなハードなSFが! と思っていたらなんかヒトガタケッセンヘイキみたいのロボットに乗って宇宙で戦う話になってた…。人類が遺伝子改良をして三種の人間になって差別ある社会とか(あまり差別を感じられないのは、差別が現れている部分と、そんな描写が一文字もない部分が混ざっているから。なんかいろいろ足りない)、その設定は面白そうだと思ったのになぁ。あと、永野護からしょうがないのか、最後の方の変な小咄的な漫画とかホントいらないっす、小説読みたいのよ。
設定は面白そう、けど話が走ってない、っていうものが多くて残念な世の中ね。


黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

200年以上にわたる二つの王家の殺し合いを、国の平和と反映のために終わらせるため、それぞれの矜恃を守りながら、時に他の誰にも理解されずに恨まれたり蔑まれたりしながら、信念を貫いた二人の頭領の話。かたや権謀術数と細やかな作業によって少しずつ状況を変えようとする現国王。もう一方はその人間的魅力を時に利用しながらも、十数年もの間憎悪と嫌悪と軽蔑の中で絶えながらも大局を見据えたできる限りのなせることをなした敗残の王家の頭領。
会話で話を進めるのが主要な流れなので、平行線の討論を繰り返し読まされたりと冗長のきらいはあるが、二人の葛藤や、信念が主題になっているので、しょうがないと思わないでもない。(それでも反対する他の有力支族の頭領たちの話はうざったい。)
「白銀の王」の方が割を食ったとしか思えないのだが、負けた側だからしょうがないのか。最後まで完全な味方であったのは、嫌々ながら結婚した「黄金の王」の妹ただ一人だったことが、哀れでもあり純愛でもあったのかな。
『瞳の中の大河』もそうであったが、最後の主人公のあっけなさは、希望を見いだしつつも、その後の妄想を許してくれない厳しさ。


家庭内で使う洗剤とかの説明文の字が小さすぎるのだが、これからイヤでも高齢化が進むんだからもうちょっと大きくして欲しい。最近どんどん見えなくなる。