南北朝の動乱、孤狼と月、中世修道院の世界

謹賀新年。

まだ冬期講習が終わらない。今日で終わりだが。


日本の歴史〈9〉南北朝の動乱 (中公文庫)

日本の歴史〈9〉南北朝の動乱 (中公文庫)

日本中世史の佐藤大先生著。「も一つ」という書き方が大量に出てきて微笑ましい。
南北朝といえば一癖も二癖もあり、しかも清廉潔白とか器が大きいとかそんなご立派ではない黒かったり逆にバカ正直すぎたりする登場人物がわんさか出てくる楽しい時代だが、主人公の一人である足利尊氏のみキャラがまったく分からない。人間とは思えないぐらい内側がのぞき込めない。まだこき下ろされていた嫡男の義詮や、弟の直義の養子になった哀れな直冬のほうが断然良く分かる。そのために、なぜ弟と最終的には殺し合いをしなければならなかったのか(譜代の家来高師直一族殺してまでして一度は和睦をしたのに)、さっぱり分からなかった。そして幕府開闢をなした政治家としてもさっぱり。政治家ではなくあくまでも武将であり源氏の棟梁である将軍、というのであればまたその武将としての性格もまったく皆目検討つかず。不気味な存在だ。それでもビジュアルとしては大河の影響でずっと真田広之であったが。
護良親王北畠顕家足利直義が、このほんでは三代悲劇の人物であることがよく分かるその最後の描写。享年が書いてあったがその死に様がほとんど書かれていなかった義詮とか、背中にできものができて死にましたよ尊氏、以外はほとんど死に方は書いてないのだよね、楠木正成すら。
結局、武士という存在とは、とか、源氏の棟梁とは、とか、それを言うならば清和源氏とは、から桓武平氏とは、まだ行ってしまい、ブームに乗って清盛関係の本が楽しそうになってしまっている。本当はその前あたりの、職能民としての武士の誕生とその後の北面の武士天皇直属の職能民(網野の影響ダダ漏れ)、的なあたりから読みたいのだが。


フェンネル大陸 偽王伝1 孤狼と月 (講談社文庫)

フェンネル大陸 偽王伝1 孤狼と月 (講談社文庫)

最近日本人作家のファンタジーに読書傾向が向かっている。とりあえず話は始まったばかりな印象。
王国の王女でありながら、人間のようでありながら獣の知能ぐらいしか持っていないグールの軍団を率いる13歳の少女。実は誰もが嫌悪する役割であることを知らず、素直に国のため、愛する元帥である兄のためであると信じていた少女の、真実を知ってからのその身の転落、国からの追放、そして知った衝撃の真実、そこからの旅立ち、が一気に書かれているので1日かからず読んでしまった。
続きを読まなければ。最近読み終わるとすぐ内容を忘れてしまうのでできるだけすぐ読まなければ。ああ、でも読み直さなくてはならない本もあるのに、というかそもそも本読んでてよいわけじゃないのに。バイトが辛いからしょうがない、と自己弁明と正当化。


中世修道院の世界―使徒の模倣者たち

中世修道院の世界―使徒の模倣者たち

修道院の中での生活、というよりも、各時代における間違っている場合もあるけれども、それぞれの時代の要請を背景とした「使徒的生活」の解釈とその結果としての修道院、律修聖堂参事会、托鉢修道制について。使徒に倣って共住生活をして外部との交わりを禁じたり、使徒に倣って世俗にありながら修道的生活を送ったり、使徒に倣ってその特権として布教し説教をしたり。使徒についての描写が少なく、その持ってくるところ(使徒行伝と福音書で性格が違う)によってその解釈が分かれる、というのもあるが、時代的背景は大きいように思われる。残念ながら時代背景がうっすらとしか見えなかったので神学書でも読んでいるような気になってしまった。