時間封鎖・上

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

ヤバイ、ここ数年の読書で自分的にもっともヒット。ほぼ1日で読んでしまったって不味いだろう、他に読まなきゃならないものがいっぱいあるのに。
主人公の少年が12歳の時、夜いきなり月を含むすべての星が消え、そして朝に登ったのは偽物の太陽。地球は真っ黒な膜状のものに包まれ、衛星はすべて堕ち、地球規模で広がった通信網が一時途絶。しかしそれよりも恐ろしいのがその幕の外の状況。地球で1日過ぎるごとに、その外では一億年が経っているという外部世界と地球上の時間の流れの想像を絶する違い(1秒で3年ちょっと過ぎてしまう)。一体誰が、なんのために、そしてこれを脱却する方法は? 何しろ太陽は50億年ぐらいで地球を飲み込むほど膨張することになるのだから、50年以内に何とかしないと地球ごと消滅してしまう。しかし、すでに後戻りできないほど太陽は膨張し、みたいな話。
引っ張らず焦らさず状況がかなり早い段階で説明される小説としてのスピード感がもったいないぐらい。それでも最も重要と今のところ考えられる、膜を作ったものたちとその目的だけが分からないが、ひょっとしたら下巻を読んでもその答えは得られないかもしれない。おそらく、これに対処した人間たちの方が物語の基盤だから。
主人公の幼なじみの天才少年は、大人になってこの膜に対処する組織の責任者となるが、地球に残された時間と同時に自分に残された時間との戦いへと、医学がものすごく進んだ未来においても治癒が不可能な難病にかかったゆえに移ろっていく。
そして一番最初と、話が進むと時々出てくるおそらく現状である幕間とも言える「西暦4×10の九乗年」。40億年? 月が見えている。何が起こっているか分からなかったが、多少の情報が上巻の最後で分かる。そしてこれまでの話が、過去を思い出しつつ主人公が語っている話らしいことも分かる。記憶を失わないために。状況を打破するための時代から、現状までの間に何か大変なことが起こったらしいことも複線で現れているので、下巻を待つ、というかあまりにも面白いので下巻を開くのが怖い。ちょっと自分のことしとかないとダメだな、これ。