新訳・ローマ帝国衰亡史
- 作者: エドワード・ギボン,中倉玄喜
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/02/23
- メディア: 新書
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サラリーマンに向けてのものなのだろうか。日本がこの先も先進国でいるために、そして西洋諸国を抜くためにも。西洋の歴史を知るべき、とした「はじめに」の部分でまずぶっ飛ぶ。歴史畑にいる人間としては、何故ギボンが、18世紀という時代に、一般書としてローマの歴史を論じたのか、そして、何故『ローマ帝国史』とせずに『ローマ帝国衰亡史』という、 declineとfallを入れたタイトルにしたのか、の部分の説明がまったくされていないことに問題を感じた。つまり、西洋の「原点」としてのローマ帝国の歴史を単に綴った書物ではなく、著者ギボンのその歴史哲学に触れうる可能性は、たとえ一般書として出版したとしても多少でも説明はいったはずと思う。
内容はすこぶる面白いよ、それは当然だ。でもすでに3章から「衰亡」を意識している著者の姿が見えているのだから、何故なのか、はいると思うのだ。
立っては殺され、殺されては新たに立ち、というローマ皇帝の変遷、それだけでも一大歴史大河として十分楽しめたが、始めに気になったことがずーっと気になったままで、自分としてもとても残念だった。
細かい話だが、訳者による説明部分には明らかに一段落抜けている部分がある。そして、コンスタンティヌス1世がキリスト教と国教化したという、高校生にありがちな間違いを堂々と書いている所がかなりひっかっかった。キリスト教を公認したに過ぎないのに。国教化はもっと後だ。後若干「てにをは」が分かりにくい部分があったのも気になった。