魔女と聖女

魔女と聖女 ヨーロッパ中・近世の女たち (講談社現代新書)

魔女と聖女 ヨーロッパ中・近世の女たち (講談社現代新書)

ずいぶん前に読んだことがあったような気がしたが、線が引いてあったのでそうであったことが分かった。


魔女という中世後期から近代にわたって広くヨーロッパに「出現した」現象と、それと同時にまったく逆の存在である聖女が多く現れたことは、一体どのような文脈であったのか、を分かりやすくまとめた著作。二つの相反する女性のイメージの背景にある男性の文化的・宗教的思想、そしてその思想下にある女性が自らをどう受け取り、どのような活動を行ったか、という流れから、タイトルよりもその副題である『ヨーロッパ中・近世の女たち』が本作の中心的議題であることが分かる。


永遠に完全には分かり合えない男女において、男性文化が支配的であった時代における、男性の妄想から発した「怖い女たち」と「萌える女たち」という話であった。しかも「これって俺たちの妄想乙」と半分自覚しているわけではなく、ものすごく真面目に神学的に論争してしまっているところが、寒い(そこがミソでもあるんだが)。そしてそのような状態に甘んじながらも初めに「何かバカらしくない?」と気付くのも女性である、というのもなんだか現代史を読んでるようだ。
そして歴史的には「虐げられた女性の中世」観を覆し、近代への転換点を過ぎて逆に女性が社会的地位を低下させられていく様が描かれており、中世後期以降のヨーロッパの歴史に興味があれば一読の価値あり。おそらく状況は近代以降(というか明治維新以降)の日本でも状況は同じであったはず。


ああ、本棚があふれた・・・。