天のろくろ

天のろくろ (1979年) (サンリオSF文庫)

天のろくろ (1979年) (サンリオSF文庫)

絶版なんですよね。ああ、すばらしきかなサンリオ文庫
1万人の乙女と一緒に殉教した聖女の名を持つ作家。本当にSFとファンタジーの垣根って低いなぁ。
ある時機会があってお話をしたらかなり読書傾向が被ることがあった尊者関係O女史から貸して頂いた。萩尾望都の『バルバラ異界』はこれのオマージュ、と仰っていたが、読み終わってみるとそこまでかな、とは思う。夢を見ることによって世界を変える力を持った男の話だが、『バルバラ』の方は意識的にその力を使い、なおかつ失敗しても失敗しても何度も何度も繰り返すが、本作の男は帰ることによって多くの人が死ぬことに、自分の責任を感じて余計罠に落ちていくような純真無垢な設定。
そして重要なのがマッド・サイエンティストの登場。絵に描いたような「狂気」ではなく、人間、人類としての責任を説く、偽善者の顔が大きいところが読んでいてむかつく。そのためあのような終わりであったことに多少は溜飲を下げる結果とはなったが、主人公のもの悲しい結末(それでも希望もある、ような終わり方ではあったが)の引き金かと思うと、主人公は本当に優しい人だ、というのが感想かな。
ル・グイン萩尾望都はそれでもそのそこに流れるものに共通点はあるよね。女性作家であるから、としてまとめるにはあまりに単純に過ぎる何か。