考古学資料のみで歴史を見る試み
旧石器・縄文・弥生・古墳時代 列島創世記 (全集 日本の歴史 1)
- 作者: 松木武彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/11/09
- メディア: ハードカバー
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物の形や材質や色彩は、文化の正体ともいえる共有された「知」に発する物であることは、何度も述べてきた。また、そこから発した同じ人工物の世界で育ち、生きることが、その体験を共有した人々の一体感や共通感覚を高めていくこともみてきたとおりだ。人びとの心と行為とが物を生み出し、生み出された物が人びとの心や行為を織りなしていく。ヒトと物とは、そのような双方向的な関係にある。(p. 339)
個人的には、鉄が入ってきたことによって起こった、社会の高度な階層化の発生。鉄が最も代表的だが、それ以前からも、大陸(黄河や長江だけでなく、北海道におけるサハリン地方との関係も重要)や南方の島々からの外的要因によって大きく動かされる日本は、島嶼部とは言うが、田文明から隔絶された存在ではなく、逆に海という双方向への動きを促進する道からの恩恵を大きく受けた、というのは分かっていても常日頃意識していないと未だ頭からすり抜けてしまう歴史上の大切な話だ。
また、四万年という長い時代を一冊にまとめたことによって大いに利用できた、気候の変動による社会変化についても御埜がしてはならない。短い歴史を扱う上でもこの手法は使えるのかもしれないが、それほど細かい気温差がたかだか200年ぐらいの歴史で出るのだろうか、とは思った。
それからモニュメントのインパクト。考古学者の著作ではこれはかなり注目されているが、残念ながら歴史学ではまだ不十分だと思われ、自分としてはこのあたりをなんとか料理したいとは思っている。証拠としては弱くはなってしまうが、一目瞭然の理由にはなる問題であるし。
不満が二つ。一般書だからしょうがないのだろうか、噛んで含めて説明する、というカ所が多すぎて、冗長にすぎることと、特に前半に多かったが現代の物を例に出したりしてあまりにも遠い世界のことを説明するのが、分かり安いのであることは分かるが、私にはちょっと違和感を感じた。一般書だからしょうがないんだよなぁ、とは分かっているんだけれども。難しいところだ。
それと倭王誕生の下り。これは少々強引に感じた。そういうことは後付けではよくよく理解できるが、これまでの流れからみれば、いきなり論が飛んで結論に飛びついたような感じがした。このあたりをもう少し丁寧に説明することはできなかったのだろうか。交通の要所だったら奈良盆地ではなく大津のあたりでも良かったような感じもするし。