アイルランドの孤児院で

やっと記事が読めるようになった。
http://vivirlatino.com/2009/05/21/abuse-in-irish-catholic-orphanages.php
以下、全訳。

アイルランドカトリック系孤児院

次の記事はアイルランドの孤児院での虐待に関してのものであり、あまりにもよく知られたパターンにしたがっているものだ。植民化された国、家族がいないか没交渉の家族しかいない無力な子供、カトリック教会、性的肉体的暴力。しかし、今回の事件にについての必ず現れるパターンを一般化したところで、日常生活で被害者たちが対処する苦痛やトラウマの恐怖が彼らにとっては唯一であることから逃れるすべはない。


未婚の母の娘、バックリーさんは孤児院は外の世界に対して閉じた世界であり、内部の子供たちは手作業でロザリオ作りの奴隷労働の生活を続けていた、と語った。彼女はまた、1日の六十のロザリオを作るという割り当てに達しようと無かろうと、儀礼的な屈服、折檻*1そしてレイプから逃れるすべはなかったという。

彼女はアイルランド人の母とナイジェリア人の父である両親を四十代になるまで捜さなかった。その時は、彼女は盗まれた子供自体に対する正義を求めた最初犠牲者の一人となった時であった。

「私には子供時代はなかった」とバックリーさんは言う。彼女は修道女たちが子供たちが濡れたベッドに寝ないようにトイレに行くことを拒否したことによって、継続的な寒さと空腹と渇きの状態にあったことを思い出していた。彼女は虐待を詳述した手紙を密かに外に出そうとしたことによって修道女の一人にひどく折檻された。

19世紀後半から1990年代半ばまで労働形態を取った52の矯正学校を経営していたカトリック教会の修道会はこの報道がなされた後に謝罪を行い、恥と遺憾を述べた。虐待は教会が経営する他の216の子供たちのための施設でも行われ、そこには孤児院、感化院、通常の学校、障害者のための学校が含まれている。


カナダや合衆国、オーストラリア、ヨーロッパなどの世界各地で何度も何度も虐待についての話が聞かれる。捜査当局が全く発見していない唯一の地域は中南米である。世界中の教会が経営している施設内で行われていた暴力と性的虐待が、中南米だけが例外であった、ということを信じられようか。

http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5hG7UpOwvc_tTJz3KkFUHO9AUBnBAD98AKHD00
これは上記の記事の前半分も含まれている。遅くとも1930年代から90年代まで(つい最近!)行われたことについて、これまで9年間捜査がされてきたが、これまで告訴されることがなかったことで、被害者(ほとんどが五十代から八十代)が絶望的になっている、という話。当然のことながら、メアリ・マカリース(アイルランドの女性としては2代目(しかも連続)大統領)が正義が貫かれるよう強く要請。
上記の記事の「バックリーさん」が収容されていた孤児院(18歳まで収容)の経営母体はSisters of Mercy。直訳すれば「慈悲の姉妹たち(=修道女)」。
この捜査結果のレポートでは、加害者側の名前が全く後悔されていない。なぜならば、告発の中心的組織Christian Brothers(教会の兄弟たち)が、「加害者の名前が明らかにならないように」捜査当局に働きかけていたからだ、という。どういうことだ。(→この部分について、親切にもnofrillsさんが原文から正しい訳を起こして下さいました。私の理解ではミスリードを引き起こす可能性があるので、ここに載せておきます。「それは、虐待問題の中心にある宗教組織、クリスチャン・ブラザーズが、虐待を行なったメンバー全員の身元を秘密にしておくよう、調査官を相手取って訴訟を起こし、成功したからだ。」 つまり、捜査当局に働きかけていたどころか、すでにこの点については裁判所で決定済で、国内では加害者の名前が明らかになることは、このままではできない、と言うこと。また、クリスチャン・ブラザーズが問題を引き起こした複数の組織の中心、ということ。なお、私は「捜査」としているが、問題が公になったのは調査による「調査書」が提出されたことによることも指摘を受けました。以下、よろしければコメント欄を呼んでください)
マグダレンの祈り」という映画とデジャブ。あれは、未婚の母や、男の子と少し親しくしただけで「あばずれ」と決めつけられた女性たちが、カトリック系の矯正施設で暴行を受けていた、という話だったが、今度のはそのような女性たちの子供や、崩壊した家族の子供ややこそ泥をしていたような子供たちを収容していた施設での事件。


http://www.guardian.co.uk/world/2008/jul/21/catholicism.religion
そのころ教皇聖下様はオーストラリアでの同様の事件の被害者に、教会側が主催し、教会側が選んだ人たちと会って遺憾を表明。


http://www.nydailynews.com/news/us_world/2009/05/20/2009-05-20_report_chronicles_widespred_horrific_abuse_in_irelands_catholicrun_reformatories.html
アメリカでも報道。
日本でも報道されたがここでは略。


http://news.sky.com/skynews/Home/video/Ireland-church-orphanages-abuse-report-published/Video/200905315285073?lpos=video_News_in_Video_Home_Region_8&lid=VIDEO_15285073_Ireland_church_orphanages_abuse_report_published_
スカイニュースの動画。撮影されたのはタブリン北部のChristian Brothersの施設。こちらは少年の、Sisters of Mercyは少女の施設を経営。


http://www.independent.ie/national-news/martin-rebukes-bishop-over-child-abuse-gaffe-1747665.html
ダブリン大司教ウェストミンスター大司教ウェストミンスターって大司教座があったのか。という問題はさておき、ウェストミンスター大司教のヴィンセント・ニコルス猊下様は、「アイルランドの聖職者たちがこんな問題に向き合わなきゃならないなんて、なんと勇敢なんだ」とか言ったことに対して、ダブリン大司教のディアルマッド・マーティンが激怒した、という話。あまりにもくだらない話なので記事のまとめはしないが、ニコルスはラジオの生番組で答えたものらしく、逃れようもなく、しかも彼の、ウェストミンスター大司教就任のコメントでやらかしたらしい。しかも「地方色」と言ったみたいだ。はいはい、アイルランド特殊アイルランド特殊。他からもやり玉に挙げられ、本人はでてこられず、同大聖堂の助祭長が必死にエクスューズを発している模様。さらにこの大司教ベネディクト16世枢機卿に任命される予定らしい。
記事発表の前日(21日)はイタリアの休日だったらしく、この時までに教皇側から事件に関しても両大司教間の問題についてもコメントは無し。
それでもまるで中世の昔からの慣行のように、虐待の被害者とその支持団体はローマに直接出向いて、教皇の介入を訴える予定らしい。いろいろ問題の多い現教皇は、さすがにこの問題について黙りは決め込めないだろう、と期待するが、だからといって現教皇がどこまで介入するかについては期待はできない。


この話についてのあんとに庵さんのコメント。ここで紹介されていたサイト(tnfuk today's news from uk+さん)では私なんかより遥に情報満載でこの報道を知らせてくれている。


アイルランドでは90年代まで、おそらく「対イングランド英国国教会」という意味合いもあったのだろうが、宗教的な保守性が維持されてきた国。離婚が法的に許されたのは21世紀に入ってからだ(確か)。いまでも、たとえレイプ被害であろうとも中絶は認められていないはず。「イギリスで中絶するなら黙認」という法令がかつて出ていた。被害者は確か14歳ぐらいの女の子。ここ十年未満のバブルによってカトリックに対する国民の保守性はかなり消えていたように感じた。地方は分からないがダブリンではかなりの若者が日曜日に教会に行かなくなっているように思えた。保守的な時代のおバカな司祭たちが主人公のコメディ、Father Tedがアイルランドで大人気になったのが90年代の半ば。つまりいまやっと問題が噴出したのは、よかれ悪しかれアイルランドが経済大国に(お先真っ暗なバブル崩壊だが)なれた、あるいは、西ヨーロッパ唯一の「第三国」が、やっとイギリスと対等に話せる状態になった、ということだからだろう。

*1:カトリック系の学校系の施設だから、鞭打ちか棒打ちか?