気候と歴史

古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史 (河出文庫)

古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史 (河出文庫)

気候が変化して人類が生きていくのが厳しくなる(ほとんどは数世紀も続く大干ばつ)→人口は大幅に減るが危機を乗り越えるための策が生まれ、そのうちのいくつかがうまく機能する(メソポタミアの中央集権的都市国家、エジプト中王国時代の大規模灌漑、アナトリアでの農業の発明、アメリカ大陸への移動など)→小規模の気候変動(短期間での干ばつや洪水など)への対応すら難しくなる→現代、みたいな話。気候の変化には宇宙的な原因がかなり大きく、ほんの少しの変化で地表では大変化を被る。人類が生まれてから何度となく北大西洋海流が止まり、小規模な氷河期が始まる(このまま温暖化が進んで北極やグリーンランドやカナダ北部の氷河が溶けて、あのあたりの塩分濃度が下がると同じことになる)。中世ヨーロッパの融資上最高の季候の数世紀間、アメリカ大陸では数世紀に及ぶ干ばつが続く。いくつもの文明や王国が崩壊するのに気候の変動が大きいことがよく分かった。なぜ現在砂漠の地域に一代文明が生まれ、今は跡形もなく消えているのか、二も大きな影響を与えているわけだ。
気候と歴史の研究は最近になって注目度が上がったわけだが、もうちょっと全ての研究で意識してもいいような気がした。


残念な点が二つ。中国の文明についての言及が全くないこと。エジプトやメソポタミアクロマニヨン人のヨーロッパはもちろんのこと、さらにはマヤや北米インディアンまで扱っているのに、中国がマル抜けなのは問題がある。もう一点は原著は2004年という非常に新しい研究であるにもかかわらず、いわゆる「ケルト」の扱いがいわゆる「ケルト」のままであること。ローマの初期の時代だとしても「ガリア人」もしくは「ガリアの民族」ではいけないのだろうか。その当時ヨーロッパ大陸にいた人たちは「ケルト人」なのかどうかは怪しい。「ケルト」と呼ばれていたかも知れない人たちもいたかも知れないが、それがヨーロッパ大陸全体で砦を造り(これでかなりの森が消えた問のは驚き。農業のためだけではなかったのだ)小競り合いばかり続けていたのが同じ原語を操った同じ文化構造をもった人たちとは言い切れない。


それでも知的好奇心は刺激されるに足る意欲的な著書だった。これって一般書かな、注もないし。