あんまりいい世界じゃなかった

ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)

ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)

邦題があざとすぎる。原題は『A Brother's Price(兄弟の値段)』。
兄弟姉妹が三十人いても息子は一人か二人生まれればいい方、という男子極少世界の話。
政治も軍事も経済活動もなにもかもすべてにおいて決定権があるのは女子。男子はただの種馬、拉致されないように家から一歩も出してもらえず家事をこなして成人したら売られるか他の家の男子と交換されて結婚して「奉仕」する世界。夫一人にひどい場合は妻三十人とかになるわけだから、普通に考えたら腎虚で死ぬ。そんなハーレム的状況は男子的にはよろしくないのでは。決定権ないし、お金ないと淫売宿に売られて薬もられて体売らされて病気もらってあぽーん。
女子としても夫は姉妹と共有しなきゃいけないし、長女以外は決定権あんまりないし、息子ができないと家系が途絶えちゃうし、という意味であんまりいい世界じゃないなぁ。
という世界の、男子なのに教養があって、決断力があって、行動力があって、それでいて家事もよくでき妹弟の面倒もよく見る、サラサラ長髪黒髪+青い目をしたまれに見る美少年、しかも実は高貴な血をひいていて、という少年が王女様に見初められてシンデレラになる話。主人公補強されすぎ。しかも「美しい」と褒められるとポッと頬を赤くしてうつむいたり、もじもじしたり、謙虚(でも卑屈じゃない)で家族のためを思い(ここまでこれが女子だとイライラするんだが、自分としては)、それでいて父と祖父仕込みの房事のテクニシャン。
萌えました。大変楽しかったです。