クールすぎる主人公?

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)


人間としての感情が希薄で機械のような男、
という設定の主人公だったので「萌える」かと思ったらそうでもなかった。
始めはSFというより戦闘機もの、といった風合いが強く、
乗り始めるのにちょっと時間がかかった。


舞台は宇宙のどのあたりにあるどんな星だかよく分からないが、
地球の南極上に突如現れた亜空間通路のようなものと繋がっている星、フェアリイ星で、
かつてその通路を通って地球に侵略しに来た、
これまたどこの星からやってきた、どんな形をしているかまったく分からない、
「ジャム」というものとの戦争を行っている、そういう設定。


なかばあたりで主人公が、この戦争における人間の意味を疑いだしたあたりから、
どんどん引き込まれていき、さらに機械にも疑いを持ち、
(正確には主人公ではなく主人公の上司だが)
最後には主人公が唯一信頼していた彼の戦闘機「雪風」にも疑いを抱きだした時点で止まらなくなった。
SFとしてのなんだか分からない「不気味さ」が増してきたのと比例した感じ。
なのでジャムの作った新しい「兵器」が出てきて軽く興ざめではあったが。


日本人の書いたSFというのをちゃんと読んだのはこれが最初。
今までは翻訳物ばかりで、その作者の文章の「イロ」というものはあまり気にしていなかったが、
日本人による日本語のSFというのはやはりそれなりに文章が気になるもので、
始めにはこの作者のたたみかけるような名詞だけの文(というか名詞ごとに読点がつく。
特に戦闘機の発進までのシークエンスのあたりがそう)や体言止め、
というのが少々気持ち悪かったが、半分あたりで気にならなくなり、
最後のあたりではそれが気持ちよく感じてくるようになった。
なので(時間がたっているので文体が変わっている可能性もあるが)、
続編も読むつもり。留学が終わってからなので秋以降になるけれど。

グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)

グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)



と、勉強と関係ない本屋漫画を読みまくった一時帰国の3週間であった。