バブルとアイルランド経済

ある統計によると、アイルランドは世界第2位の金持ち国になったそうだ*1アイルランドは現在バブル真っ最中だと確実に感じられる(という話はかなり前からあったが)。
歴史学専攻としては恥ずかしながら、私は経済学の「け」の字すら知らない。むろん経済学の授業をとったこともないし、それらしい一般書すら手に取ったことがないので、何ら偉そうなことは言えないのだが、ちょっとだけ考えたことがある。アイルランドの経済状況も、アイルランド人からチラと聞いただけなので、その方向がかなり間違っていることも十分あり得るのだが。
アイルランドでは、当時の日本と同じように、「財産」の最も重要なものが家と土地、ということらしい(いまでもそうかもしれないけど)。二十代三十代の若者世代は、当然、将来的に家を持つことを望んでいる。しかも大きな家を所有したい。十年ほど前から経済は右肩上がりとなり、ここ五年での成長はかつての日本の八十年代を思わせる状況である。ダブリンは年々、外へ外へと拡大し、郊外は大型マンション、大規模な住宅地域が造営されている。さらに住宅地は毎年120%、130%上昇している。夏やクリスマスのバカンスには海外へ大挙して繰り出したりもしている。街を走る車は、ほとんどが新車。最初にアイルランドに来た時からは想像も出来ないほどの、変わりよう。しかしそれと同時に借金を安易に抱えるケースが多くなっているそうだ。特にクレジットカードによる大量購入、銀行からの三十年、四十年にもわたるローン(これはもちろん住宅ローン)。ゴールデンタイムでは、ファイナンシャル・プランナーによる、視聴者からの相談番組が放映され、かなりの視聴率を稼いでいるらしい。
日本は朝鮮特需から高度経済成長、バブル、そしてその崩壊、その後の経済危機、そして現在の二極分化という五十年を経ているが、その流れ、起因、影響、問題点を十分に学んだ(十分ではないかもしれないが、少なくともある程度は)と言えよう。そのあたりを「反面教師」としてアイルランドに提供することが出来るんじゃないか、と、浅はかにも思うわけだ。アイルランドの現在のバブル的経済成長の基盤は、もちろん日本と同じではない。また、国の状況も、EU圏内であること、IT産業への積極的投資(の割に、インフラは日本より劣っているように思えるが)など、全然違う。それでも、日本よりも早い経済発展の末、最終的日本の二の舞になってしまったとしたら、かなり危険ではないかとも思える*2。国の資源はほとんど無いのだから。そして日本より危険なのは、インフラの決定的不備。ダブリンの道路状況どころか、電力の供給さえ海外からまかなっている状態。
この歳で未だ学生、将来に対してはまったく楽観的予測は立てられないどころか、かなり悲観的になりそうなので敢えて考えないようにしている私のような人間は、日本では少なくないんじゃないだろうか? アイルランドでは若者は、将来に対しては、日本ほど悲観はしてないのかもしれないが、一度、こういう生活をしてしまうと、ここから脱するのはかなり難しい。だからこそ、いまの状況でいつどうなっても良いように、その失敗例としての日本から学ぶべきことがあるだろうし、逆に日本側はそれを提供するべきではないだろうか。
とはいえ、自分には提供する術どころか、何をどう提供すればいいかすら分からない状況なので、こんなところに書き散らしている訳なのだが。
多分いろいろ間違ってるんだろうな、私の認識も。すでに提供されてるかもしれないし。

*1:1位は日本らしい。どういう統計なんだ?

*2:日本はそれほど危険じゃないか、というと、その危険は現在進行形な訳で、そうとは言えないのだが。