アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

やる気が出ないので最も愛する現実逃避、読書(小説)を敢行。一日で読了。やはり日本語は読みやすい。とはいうものの、訳はちょっと難あり。初版が古いせい(1979)もあるだろうが、主役の妻の話し言葉、あれはもう少しどうにかならないだろうか。また、意味は通じるが日本語としてややおかしい箇所も結構ある。まあこれは、ハヤカワにはよくあることだが。原著を読んでいないので、この指摘自身がそもそもおかしい、かもしれない。でもこの辺をもうちょっと何とかしないと、「翻訳本は苦手」という読者を開拓することはできない、と思う。「ハリー・ポッター」シリーズの翻訳もかなりおかしいが、あれは大量に売れてるから、それだけが問題じゃないのは分かるけれども。
原題はThe Cave of Steel。この「Cave」という単語を訳すべきではなかったか、とタイトルから突っ込んでみる。よほどの上級市民でない限り、本物の太陽を見たことも、地上の風を感じることもない人々のひしめく、窓のないビル群に住み仕事をしている人たち、の住む都市なのだからして。
アシモフの「ファウンデーション」シリーズは、アシモフ著のものは総て読んだが、後期の作品に現れるロボットが、気にはなっていたがイマイチ興味が持てず、彼のロボットものを読むのはこの本が初めて。「ファウンデーション」の後期は、ロボットものと見事にドッキング、と言われていたことは知っていたが、逆に「ファウンデーション」の後期を思い出せず、そっちが読みたくなっているジレンマに今陥っている。
SFミステリー、とも言われているが、ミステリーとはやっぱり少々趣が違う(と思う。ミステリーはクイーンしか読んだことないので断言はできない)。それよりも、人間の刑事とロボット「探偵」Rダニールとの微妙な掛け合い、その流れがすばらしい。最初は人間側が感じる、味気ないロボット、よくできすぎたロボットという感じがしてRダニールに親しみを持てないが、最後のたたみかける展開(つまり犯人がじわじわ分かってくる段階)を通って、最後になってRダニールに親近感を感じ、彼が地球を離れることを知ってとっても寂しく感じるのは、登場人物と同じ心境になった。
佐藤史生の漫画によく出てくる「イースト菌で作るありとあらゆる食べ物」のネタがここにあることを今更ながら知った。そういえば彼女はRダニールが大好き、とどこかに書いてあった気がした。