瞳の中の大河、黒羊8

瞳の中の大河 (角川文庫)

瞳の中の大河 (角川文庫)

逃げたかったんだ、いい案が浮かばないのだもの。読書の秋だしいいじゃない。
朝7時まで読んでしまった。いいスピード感。異世界ファンタジーではあるが、祖国のためだけに戦う職業軍人の、軍人としての生涯の物語。時代がいまいちつかめないのは、比較的近代的な銃や写真が出てくるのに、領主制社会という設定のせい。個人的にどうかなぁ、と思うのは「チャンス」とか「スピード」的な用語が出てくること。異世界に飛んでいる意識がこちら側に引き戻される感じで少し嫌であった。
郡の学校出の少尉(キャリア組だが平民なのである程度以上までしか昇級できない)が、すべての階層の国民の安寧のために軍の正義によって祖国の秩序の回復を目指し、社会の転覆を目論む次章反乱軍である複数の野賊との三十年にわたる戦争(内戦)を終結を目的に必死に戦う物語。実際のところ軍には正義はほとんど見られず、国王は傀儡でたった十人の上級貴族に政治は牛耳られ、祖国の秩序は貴族たちにとって都合の良いものであり、野賊の目的は民衆が喜んで受け入れるであろう理想の革命社会である、という矛盾の中で、それでも軍の正義と祖国の秩序を信じ、国民の安寧のために戦う主人公。平民としては望むべくもない名誉を得て国家の英雄になりながらも、軍の「正義」と祖国の「秩序」によって虜囚の身となりながらも矜恃を捨てない主人公。
途中から止められなくなったのは、主人公の頑固なまでの信条であり、その落としどころがまったく見えなかったこと。ソフトなふぁんたじ〜でもないし萌えもないしバラ色の終わり方ではなかったがだからこそそんな世界があることが信じられる、よいお話。


黒×羊?12人の優しい殺し屋? 8 (ビッグコミックス)

黒×羊?12人の優しい殺し屋? 8 (ビッグコミックス)

完結してた。なに〜〜〜。「すべて記憶操作による偽の記憶だったのよ」的解決に、まあ、よかったね、と。両親でさえ見分けがつかない男女の双子というのはあり得ないと思うので、きっとこれはファンタジーにちがいない。