ハーモニー

昼まっから読書、昼寝、読書、昼寝、食う、寝る、読書、の日々が終わってしまった…。


ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官』の続編というかその後の世界、ということは解説を読むまで気が付かなかった。気が付かなくても全然かまわないけれど。
その後の暴動から核戦争を経て、謎の疫病発生を乗り越えた人類が形成したのが生命至上主義社会。人間は社会の大切なリソースだから、みんながみんなを大切にする優しさと自愛を垂れ流しする共同体での生活と、サーバと接続した健康管理のデバイスを埋め込みほんの少しの病気も即座に投薬という保健政策(政、という字を使うことも矛盾するが)死亡原因は老衰と(それでも100歳以上生きる)自己とそして最も多いのが特に若年層における自殺。つまり社会的に人間にとっては実は見えないストレスがかかっているわけで。そんな中で社会に対しての憎悪と「自分は自分だけのもの」という意志を持った少女とその仲間たちが、「リスカした時の痛みだけが自分が生きている証拠」みたいな行動を起こすのだがある時全世界的なある事件が起きて、みたいなミステリー仕立てのSF。ガジェットと設定はもろSF。テーマは人間と自然というか人間の中の自然であるところの動物性って一体何、というか。
天国的な世界での地獄のような健康社会を、ガンを患った作者が病床で描いている、という図を絶えず頭に浮かべて読んでしまっている自分が少し残念。しかもこれを書き終えたあとまもなくその作者が亡くなってしまっていることを知っている自分も残念。
作者の長編2作目にして最終作。1作目の『虐殺器官』に比べてるとそのオチに至る、犯人の設定が突然すぎて少し落ちるというか「ええぇ」と思わされたけれど、そこに行くまでのドキドキ感とかこちらの予想の斜め上を行くであろう理由に対する期待はすこぶる大であった。「自分は自分だけのもの」が壮大な伏線とは。
エピローグ直前の、
かゆ
うま
状態が怖すぎ。