火星年代記

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

改訂・決定版、らしい。時代設定が2031年〜になっている。
序盤の火星人との接触の空恐ろしさ。問答無用は分かりやすいとはいえ(アメリカのやり口に不満のあるものは火星人の行いを理解することを禁じ得ないんじゃなかろうか)言葉は通じるのに内容が通じないことへの恐怖と、人間の心の弱みにつけこむ幻想の恐ろしさ。
中盤の「西部開拓的火星開拓」で、火星人たちがほとんどいない状態をひどく悲しみながら読んだ。所々前後繋がらないところがあるのは短編をまとめたもので、もともと一つの話にかっちりそろえるつもりがなかったことが原因だろう(世界観は一緒だが)。しかしアメリカ人しかいないらしい設定には大きな違和感を感じた。
が、ゆらりと火星人の存在を感じ始めるところから最後の話までの数話の話は、明らかにテイストが変わっている、感じがした。個人的に。説教臭さがほとんどなく、突然の静寂、そしてかすかな(もうほんとにかすかな)希望で終了、かな。でもあんな希望は私はいらない。お先真っ暗じゃないか。
幻想的な表現で、みたいなその表現で特徴づけられるブラッドベリだが、このほんではそれがいい感じで話を進めていたと思う。個人的には『華氏451度』より面白かった。


犬の部分だけは読みたくなかった。かわいそすぎる。