メロヴィング王朝史話(上)

メロヴィング王朝史話〈上〉 (岩波文庫)

メロヴィング王朝史話〈上〉 (岩波文庫)

一応『歴史十書』も史料に使ってることになっているが、どう読んでもゲルマン神話だ。傲慢で美しくプライドばっか高くて敬虔なキリスト教徒とはどう考えても思えない女ふたりに翻弄される男たち、といった流れが、『ニーベルンゲンの指輪』のようだ。多分順番が逆なんだろうけれども、これぞゲルマン魂なんだろうか。といっても翻弄される男たちの大半がみみっちくてとてもじゃないが英雄とは思えない優柔不断のヘタレなところが難点だが。グンテル王みたいな人たちばっかりだ。
しかし暗殺するは略奪しまくるは火はかけるは都市取ったり取られたりするは、とりあえずものすごく野蛮。騎士が出てきたり、雄々しく戦ったり、裏切ったり、忠義に戦ったり、よくある「中世風ファンタジー」的な舞台なのにもう汗臭そうで、こんなファンタジーイヤだわ、と思った。
それでもどっちつかずで文化的にも混合していて、古代では明らかにないが13世紀以降の中世ではない、というこのごった煮でもなんとかそれなりの秩序を構築しようという中世の初期はやっぱり好きだ。