華氏451度

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

何度聞いてもタイトルが覚えられないのは数字が苦手だからだろうな。解説に摂氏200うん度と書いてあったがそれも思い出せない。セルシウスがセから始まるから摂氏になるのは分かるが、なぜファーレンハイトが華? カーレンハイトと読んでいたのかそれとも摂氏とセルシウスが偶然か。


みんなが平等に幸せになるために、検閲制度などもない状態ですべての本を焚書に処する近未来アメリカ。本を読まず(所持している時点で法律違反、場合によっては一緒に焚書される)、睡眠中も外さずにすむ小型のラジオと、壁一面サイズのテレビによってものを考える時間を与えず刹那的な娯楽が今日される世界。それが普通、焚書官である自分が正義、という主人公が、少し不思議ちゃんだけれど我々の感覚では普通の少女と会話し、本に対する世の中の状態に疑問を生じ、我々にとっては正しい行動(=本の維持をめざす)によって世間から浮き上がり、逃亡し、逃げ出した先で見た世界でただ一つ正しくなかった国家に対する世界からの攻撃(とははっきり書かれてはいないがおそらくそのようであると読める。この辺も現状のアメリカを予見しているようで恐ろしい)によってがれきと化した街に、記憶媒体として戻る、「俺たちの戦いはこれからだ」的(良い意味で)終わり方。
黒いユートピアな童話、といった話の始まりから終わりまで、わたしとしてはかなり読みにくかった。主人公の内面の行きつ戻りつ、こちらは「それが普通だよ」と思っているのに本人には分からず時としてやりすぎの行動をとるところが、可哀想というか悲しいというか寒いというか。うすら恐ろしい話だが、解説を読んで現状が似たり寄ったりの世界になりつつある、という危機感を抱いていることがヒシヒシと感じられて、解説者のその意識を読んだときの方が薄ら寒くなった。実際そうであるかもしれないと思えるし。


テレビをみながらやラジオを聞きながら勉強するのは不可能だし、わたしは。